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いいから何か一つ書いてみようか。
そうしたら自分の弱点も見えてくるだろうし。
だから今回はただ文章をつづってみる。
頭の中をここに描写する気持ちで。
俺めちゃめちゃTとR間違えるな。
「よし……全部そろってるかな」
最後の段ボールを開き終わり、僕はほっと一息ついた。
まだ椅子がないので、仕方なくフローリングの床に直接腰を下ろす。座布団があればよかったか。次の引っ越しに備えて買っておかないと。ああ、それより食料品か。それとも寝具を先にするか?
体を休ませたぶんのエネルギーを無駄にすまいと、頭が活発に回り始める。身に染み付いた研究癖が、勝手にポケットからノートを取り出させる。気づけば、僕は無意識にノートに思考を書き出していた。端から一行ずつ、丁寧に。
やがて文字が一ページを埋め尽くしたころ、ふと、ノートの背後に窓から差し込む光が見えた。
//必要なのはU、I、OとG、Hあたりのうち替えかもしれない
なんとなしに、日光を見るのは久しぶりだな、と考えた。そんな自分に驚いた。そんなに外に出ていなかっただろうか。確かに、最後にコンビニに行ったのはいつだったか思い出せないが……それはみんな一緒のはずだろう。
くだらない言い訳を思い浮かべつつ、カーテンを閉めようとした手が空を切る。カーテンなんてなかった。ノートの端に、
『カーテン』の一行を書き足しておく。
佳丈(よしたけ)
過剰セリフ。
雪名(ゆきな)
説明セリフ。
永海環(ながみたまき)
英会話セリフ。
武井家久(たけいいえひさ)
無性格セリフ。
嘉将(よしまさ)
過少セリフ。
果たして僕は何を勘違っていたのか。
環境を変えることだけが個人のできること、それか?
変えた環境をどう活かすかを、未来にばっかり押し付けて。
どうにでもなった。
どうにもならなくしたのは、僕だ。
一時の感情が連れてくる結果なんて、わかっていたのに。
それで自分がどうにかなるのかが、想像の外のはずがない。
早く終わらせなければ。