「それじゃ気いつけなよ、あんちゃん。ぽっくり死なれちゃ寝覚めが悪い」

 かかっ、と運転席の老人が笑う。

「私からも。五体無事を祈願しております」
「二人共縁起が悪くないかな」

「縁起も大義もあるもんか。言えるときに言っとかないとな。あんちゃんも何か、言いたいことあるなら言っとけよ」
「……そうですね。では……」

「お世話になりました」

「行ってきます!」

「これが……」

「おはよう。どうしたのかしら、新入りさん」

「あ。おはようございます。すみません、道の真ん中で」
「いいわよ。誰も気にしないわ」

「あなたは」
「入都管理局。と言っても、今は仕事はないけどね。」

「こんな時間に新入りが来るって話だもの。気になって早起きしたのよ」
「それほど注目される覚えはありませんが……」
「……ま、まあ普段より一時間早くするだけだから。それで珍しいものが見れるなら、あなたも起きてみようって思うでしょ?」
「確かに。私もおかげで、この景色が見られました」

「……それで、どこに行きたかったの?」
「え?」
「景色を見るにしては、視線がずいぶん地面寄りだわ。道を探すのが主目的だったんじゃない?」
「……驚きました。流石は管理局」

「え、あ、うん。そうね。えっと、良かったら道案内するけど。いる?」
「それは有り難い。ぜひお願いします。現地の方と一緒なら安心できます」
「よし行きましょうか。長居は無用よ」
「は、はい」


三千文字

「わあ……」

「あまり離れると逸れるわよー」
「っと、すみません」

いろいろ見回す

「あのー、管理局さん」
「丁乃よ。管理局じゃ物々しいわ。あなたは?」
「梁先です。梁先茶樹」
「へぇ、いい名前ね。特に樹がいいわ」
「それは重要なんですか?」

「それより、いいんでしょうか。こんな適当に歩いていて」
「いいのいいの。この都市、待ち合わせに向いてないんだから。目印だの、写真だのは意味がないわ」

「それより適当に歩いて、梁先がここと思う場所で待つ。そのほうが可能性は高いわよ」
「はぁ」

「それに、落ち着いて観光できる時間なんてこの都市じゃ貴重よ。楽しみましょう」
「それ以外の時間は何があるんですか?」
「……早いとこ待ち人に会ったほうが良いとだけ」
「……」
「ああ、その。そんなに警戒する程の事、だけども。この都市の一番の見どころでもあるから。それに貴方なら問題ないし」
「……問題ない、とは?」


三千文字

「その印。『掃除屋』でしょ?」

「掃除屋が新人を入れるなんて、それだけで十分にニュースよ。朝っぱらから私が動くくらいにはね。平穏に生きたいなら、印は隠しておきなさい」
「……肝に銘じます」


二千文字

「……なんてね」

「隠す必要なんてもうないわよ。あれだけ回ったんだもの、遅くて午後には速報が出回るわ。『掃除屋のニューフェイス、鮮烈なデビュー』とかね」

手を取り避けさせ

「さ、もう少し歩きましょ」


二千文字