「いらっしゃいませ」

「何にしましょうか」

「井戸水。ストレートで」

「かしこまりました」

「はい、どーぞ」

「ありが……ありがとう。うん。……ご親族?」

「いいえ。あの方の親族は、私の身に余ります」

「ひとまずマスターが知らないわけじゃない、か。ならいいか」

「おいおい〜、絶大な信頼じゃんマスターく〜ん。気が置けないなぁ」

「手も含めて余ります」

「距離は置かれたな」

「気のせいにしとくぜ」

「改めまして。私は――ちっ。十番見習いだよ」

「今舌打ちした?」

「ちっちっ鳥が鳴きました」

「それで騙される人間いない……もしかして俺人間カウントされてない?」

「人情味が足りないぜよ。私が何者かって重要かな?」

「正式にデータが出たわけじゃないけど、要人の暗殺が前年比200倍らしい。俺も一応要人なんで必要なんだ」

「私、実は雇われの身なのですが。上からこの方を酒場に置くようにと通達があったのです」

「通達されたのです。

「時勢が時勢で情報が足んなくってさー。酒場ならバイトついでに集まるでしょって」

「確かに、ここはなんか人が集まるしな。雑な指定でも辿り着ける場所だ」

「不思議なもんだねぇ、色々試したけど八割ここにつながるんだ。だったら他の人も一緒だと思ったけどガチなんだねぇ。マスターなんかした?」

「何もしておりません。この物件は借りたものなので、前の方が何かしていたのかもしれません」

「借りたのはいつ?」

「異変の日から二週間ほど前です」

「それで仕込まれてたんなら、前の人異変を知ってた説出るねぇ」

「建物……建物か。詳しい人が居りゃいいんだが」

「おやおや五番長、いないのかい詳しい奴」

「すって看破されてる……五番はモノよりヒト派だから。パッと思い付かないな」

「ほほう。ならばこのな……ああ、もう。十番見習いによって後でちょいと調べてやるぜ。

というか、十番だって? 変だな、この街は一から八までしか番地ないぞ」

「すごい説得力だ」

「気が置かれてるなぁ。新居かな?」

「絶妙に誤用と言い切れないラインを突いてくるね君」

「えっ、いいの? せっかくの疑問、そんなんで捨てていいの?」

「じゃあ君から名乗りなよ」

、、、