外に出ると、一歩で大きめに前に跳ぶ事ができるようになっています。本物のように七里は飛べませんが十二分です。なのでここからは木の上を跳ねていきましょう。枝の反発も手伝って更にスピードが上がります。
木の上は一見小枝まみれで進むのは厳しそうですが、ご安心下さい。こちらにも地上同様、獣道と呼べるものがあります。しかも地上よりも分かりやすく目印がついています。
何でもこの辺は妖怪たちの飛行練習に使われている道だそうです。狭いルートを高速で飛ぶことで、飛行自体の精密性を上げていくんですね。本来は妖怪の山や草の根ルートでやってる時に教えてもらう極秘情報ですが、これはRTAなので思う存分「知ってた」していきます。
どころか、「作った」もします。あくまでこの道は飛行の練習補助なので、最適な道になっていません。なので体力や魔力に余裕がある場合は小枝をへし折りぶち抜き集めつつ進んでいきます。移動と同時に熟練度が貯められて旨味。やっぱり木材相手なので効率は下がりますけど。
ここまで解説したので察するかもしれませんが、本RTAの移動手段はしばらくこの七里ジャンプになります。室内では流石に一歩が大きすぎて使いにくいので、履き替えて普通に移動します。しばらくは。
とか言ってたら、あっという間に二つ目の目的地、|廃洋館《スタート地点》に着きました。別ゲーみたいな早さだあ……。
ハイペースで体力魔力を使ったので、疲労困憊の状態です。そういえば、前回も同じような状態でしたね。あの時はどうしたでしょうか? そうですね、体を暖めていました。
なので今回は洋館の庭に火を放ちます。集めた小枝をばらまき、カンダタロープを着火剤にして火魔法。今回はそのへんに落ちてるガラス片で破断します。
このままでは燃料が足りないので廃洋館に入り、あの時お世話になった籠を一つ解体して火を強めます。ああ、ヒノキってそういう。ちなみに炭その他諸々は、スピードアップのために命蓮寺に置いてきました。十分に燃え盛ったら、隣に梱包爆弾と「テアライト」をセットし、朝に脱ぎ捨てた服を火にかけて燃やします。燃えるまでの間で玄関前廊下へダッシュ。例の金策アイテムたちをガチャります。
言うまでもないんですが、実は金策アイテムはただの金策アイテムではありません。いくつかはちゃんと効果を持っています。ただその効果は回りくどかったりコストが高かったり害しかなかったりと癖が強いので、最序盤では金策アイテムとして活用していたわけです。それだけのはずだったのにな。カンダタロープはただの長い蜘蛛の糸なので例外です。
今回は不思議とお金の心配が全く無くなったので、後で引く予定だった効果目当ての品を一つ探します。名称は『西蔵人形』。はい、二つ目の人形となります。一発で引ければ後が楽ですがどうでしょうか?
「弓兵埴輪」「血の分水嶺」「超貧乏玉」……駄目ですね。引き直しになります。
引き直す場合は一度別の建物に入る必要があります。そのタイミングで配置や種類がリセットされるため、純粋にガチャだけやるなら一番近い建物である魔理沙の家と廃洋館の間をマラソンすることになります。
今は火が服を焼き尽くすまでの時間潰しなので、それだと一往復しかできず効率が悪くなります。なのでガチャ引き直しはまた今度の機会にし、代わりに魔法の熟練度稼ぎを始めるのが最善でした。
……それが以前までのチャートです。今回は屋根裏部屋へ行きます。まずは例の技で館の二階へ直行。今は風魔法があるので、あまりに上手く行かなかったら籠を空中で制御するリカバリーができます。けど一発で行けば必要ねぇんだよ。
しかし問題は次です。目指すは屋根裏なので、あと三階分登って五階に行かねばなりません。遠い。安定を取るなら階段を使うべきですが、ここは攻めてあらゆる手段を講じて高みを目指します。忘れずに寄り道して着替え、さらに布を一枚取り、所定の位置に立ちます。
まずは二階に残る廊下の装飾を外側からウォーククライミングして三階へ。
「テアライト」を所定の位置にセットしたら、三階に落ちている火薬を梱包し、爆発の瞬間に飛び込んで勢いで四階へ。
最後に露西亜人形を放り投げ、桶同様踏みつけて五階へ。
RTAらしくなってきたな。RTAではしばしば「香霖堂でのお買い物までがチュートリアル」と言われるのですが、こんなの見たらそりゃそうだと言いたくなります。
五階に着いたら東の端の部屋の低い天井を通常弾幕で叩き、屋根裏への隠し梯子を下ろします。なぜここに来たかというと、実はこの暗闇の屋根裏部屋、廃洋館とは別の建物としてカウントされるからです。増築でもしたんですかね? そのため、屋根裏判定に入る→廃洋館判定に入りアイテムを確認する、という流れを繰り返せば簡単に引き直すことができます。
だからここで戻れば十分効率のいいリセマラになるんですが、今回はRTAらしくさらなる効率化を図ります。梯子が降りきるまでの間に靴を履き替え、上がったら急いで玄関上の天井の元へ走り、勢いのままに七里長靴キックでその辺のモノを蹴り込んで床を抜きます。ちなみに火で回復していないとここでたまに力尽きてゲームオーバーになります。気をつけましょう(3敗)。
あ、屋根裏部屋は昼夜関係なく一切何も見えない暗闇なので、モノの位置はしっかり覚えておきましょう。モノが何かまでは知る必要のないことです。
抜いた穴からは、玄関前に並べられているアイテムが俯瞰できるようになっています。そこから覗き込むと、アイテムの配置や種類が入れ替わっていることがわかります。靴にカンダタロープを巻いて準備完了。さあ、ガチャを始めよう。
逆立ちして穴に飛び込み、アイテム配置を確認したら床を蹴って逆さのまま上に飛びます。天井に足が触れたら思い切り跳んでもう一度勢い良く穴に飛び込みます。
「Reverse Seven League Glitch」。靴に巻いた紐全体に靴裏判定が出るのを利用して、下向きに跳ぶ技です。雪山で七里の長靴を使っていたプレイヤーが突然雪に埋まったことから発見されました。何を思ってこの人は長靴に紐を巻いたんだろう。
これを応用して、玄関に落ちる前に床に足の甲を当て、蹴り判定を出して屋根裏部屋に戻ります。屋根裏は天井が低いので、偽七里でも天井を蹴って素早く穴に入り直す事ができます。あとは繰り返すだけです。
端から見れば天井の穴から逆さの百瀬ちゃんが高速で出入りする異様な光景ですが、廃洋館なので評判に問題はありません。BPM120の2/4でガンガン上下します。間隔を掴む練習として「天空のグリニッジ」を聞きながらやるのがおすすめですが、しばらくやってると合わせるのに夢中になってアイテムを見逃すので気をつけましょう(35敗)。
色々な物を見つけています……
「スードストラディヴァリウス」……「中毒性のあるエサ」……「サイレントフラワー」……「夢幻集積」……「ストロベリー大ダンゴ」……「古代翡翠」……「逆刃の死鎌」……「穢那の火」……
……えっ、穢那の火!?
…オリチャー発動! これを持っていきます!
止めるときは風魔法で少し軌道を逸らし、五階に着地します。階を降りつつ、露西亜人形と梱包爆弾を回収。
何で爆発したはずの梱包爆弾が残っているのかという疑問に対しては、これがマジックアイテムだからという答えが待っています。効果は「内部に詰めた如何なる物もその性質を強めた爆弾に変える。三回までリサイクル可能」。
分かりやすく言うなら星熊杯の爆弾バージョンです。星熊杯を見た魔法使いが作り、爆弾の品質が安定しないため弾幕ごっこに使えず、あえなく香霖堂に売っぱらわれたエコロジカル産業試作物です。正式名称は「クリアボム」。多分、何が入ってるか明確だからこの名称にしたんでしょうけど、じゃあ新しく作られたあの完成版ボムって……
もちろん、異様に使いやすい効果の裏には、カセン使うとめちゃくちゃ目を引くというデメリットがあります。こちらは評判カウントなので廃洋館の中でなら無視できますが、もう一つの火薬特有効果、全方位無差別破壊はどうにもなりません。半径5m程は跡形もなく消し飛びます。だから先に布を回収する必要があったんですね。なんでこんなの店売りしてるんですか?
玄関まで来たら、穢那の火を走りながら引っ掴みます。ここでのオリチャーの影響は大きいです。初回限定のアレとは違い、今回は持っていけるのは一つだけとなっているためです。代わりにお金をゼロにする度に持っていける回数が回復します。積み防止ってやつですね。なのでこれで三回目の来館が確定しました。
いつゼロになったっけ? と思うかもしれませんが、雲山さんに金庫を預けたときに盗難判定で数値上ゼロになっています。バグのような気もしますが、初対面の強面親父に対する警戒心と考えると納得できなくもないかもしれません。しろ。
さて、庭の火まで戻ってまいりました。上手に焼けたかな?
「あっ、お帰りなさーい。ねえねえ、どーやって外に出たの? 夜のお散歩してたら、木の上飛んでたからびっくりしたよ。ひゅんひゅーんって」
……よし、焼けてますね。灰を棒でかき回し、ご希望の品を取り寄せます。キラッと金属の輝きが見えたので、火傷しないようさっきの布で包んで懐へ。これで「変哲ナイフ」を手に入れました。ここでの用事は終わりになります。夜が明ける前に最後の目的地へと木を乗り継いでいきます。この廃洋館には屋根に枝がかかるほど高い木が近くにあるので起点に便利。
「あらら、気づいてないのか。貴女はどこか違うと思ったんだけどなあ。まあいっか! 家に帰るまで、監視してやるー。」
ところで、冒頭に百瀬ちゃんが走り出した方向を覚えているでしょうか。実はあの場面はとても重要です。なぜならどの方向に向かっても必ず廃洋館があるからです。百瀬ちゃんが倒れていた場所を中心にして、だいたい半径400mほどの円周沿いに必ず建っています。
これが意味するのは、『廃洋館は発見した瞬間に場所が確定する』ということです。他の建物の位置は固定なので、つまるところ廃洋館だけはRTA的に都合のいい場所に配置することができます。
ではスタートから二時の位置には何があるのでしょうか。
「はっ……はやっ……けほ、けほ。あ、あれ? この趣味の悪い建物は……」
そうだね、紅魔館だね。
というわけで、何とか日付が変わる前に最終目的地に到着しました。図書館には近づきたくないですが、紅魔館には行く必要があります。なぜならここには『倫敦人形』に必須のアイテム、「シルバーナイフ」があるからです。
手に入れる方法は千差万別ですが、今回はオーソドックスに盗みます。メイド長はナイフの数を覚えているので、すり替え用のナイフはちゃんと用意しましょう。だから変哲ナイフが必要だったんですね。
門まではうっかり跳ばないようにしつつ、普通に近づきます。ただ顔バレしたら不味いので先程の布を被って適当にカンダタロープを巻き、フードにします。現時点で帽子は外せないので、強盗というより農民あるいは市女笠。今の季節は夏なので、布が熱々じゃないことだけは救いですね。
……? 何か違和感。
代わりのナイフは結構何でもいいですが、その代わり種類によってバレるまでのおおよその時間が設定されています。例えば「ステーキナイフ」なら二秒前後です。これバレてないというより困惑の時間だと思うんですけど。
時間は作りがしっかりしているごとに長くなっていき、変哲ナイフなら三日保ちます。つまり実質ノーリスク。さすが服の下に仕込んでても一切気づかれないナイフ。こういう最初の場所に最強武器が眠ってたりするシチュ好きなんですけど名前とかあるんですかね。
「――お待ちなさいな、ご客人。ここは紅き悪魔の館。何か御用ですか?」
ところで、紅魔館には優秀な門番である紅美鈴さんがいます。昼間なら大抵寝てるのでスニーキングで横を通れば突破できます()が、夜はその分かぱっちり目覚めております。
スニーキングなど怪しい動きはもっての外、では塀を飛び越えればいいと思いきや、塀の上には文字通り気が張ってあるため怪しい人物が通れば即刻勘付きます。夜に紅魔館に来るのって本気の吸血鬼と戦いたいバトルジャンキーみたいなのと泥棒じみた人のほぼ二択なので、その警戒心はあながち間違ってもない。
――『智』を求め。『法』を学びに参った。
「あら、なるほど。失礼致しました、大図書館の来館者ですね」
なので今回は知識泥棒として潜入です。図書館は返すもの返せば目で見て盗むのはフリースティールです。パチュリー館長曰く『図書館に来るような奴はいずれ私達魔法使いの糧になる』そうです。まあおかしな奴は吸血鬼姉妹の玩具行きにすれば問題ありませんからね。この辺のドライな感覚はさすが百年魔法使いやってるだけあります。
「それでは、始めさせていただきます」
ちなみに、パチュリーさんのご意向により、初回で大図書館に入る輩は力を試してほしいという要請が出されています。力が無い人が大図書館に入ると本特有のトラップで魔力を根こそぎ刈られたりするのでこれまた間違ってません。
間違ってないんですが、やはりRTA的に考えるとここで戦闘が始まるのは辛いものがあります。現在のスキル構成を見てみましょう。
《table:#0000FF》
[[.根性/応用
速読/基礎
救急医療/応用
魔法スキル各種/(基礎以上のみ記述)
- 火
- 風
- テアライト
- デノイザー
- エアサイト
会話補助/
ペーパーナイフ
願/基礎
幻視/基礎(常時発動なのでじわじわ熟練度が貯まる)
《/table》
各種魔法があるとはいえ、せいぜい使えるのは火と風だけです。ほかはお世辞にも戦闘中に使うとは言えないものばかり。これで大図書館に入らなければなりません。どうすれば良いでしょうか?
「ご安心下さい、武術は使いませんので――!?」
答えはシンプルです。戦闘しなければいい。
というわけで、初手で「閃光爆弾」を投げて視界を奪います。初回で手加減をしていて夜目も利く美鈴さんには効果覿面。お嬢様なら「加減と油断は違うわよ」とか説教が始まるところですが、私は鬼ではないのでさっさと横を通り抜けます。
「おいおいどこでそんなの拾ったんだよRBAか?」と訝しむ諸兄諸姉の方々、落ち着いて七回ほど←を押してください。私は梱包爆弾をどう説明したでしょうか。
そう、「如何なる物もその性質を強めた爆弾に変える」効果です。この看板に偽りは無く、例えば本を入れると同じ本が大量に吐き出される本爆弾になります。他には三時間ほど放っておくと空気を取り込み空気爆弾と化します。聞けば聞くほど危険物。
今回はそれを利用し、「テアライト」で光を集めて閃光爆弾を作りました。あの時「テアライト」を設置したのは、爆発して下の階に落ちた梱包爆弾に、最も効率よく月の光を当てられる位置だったのです。誰だよこんな変態ルート考えたの。
「く……! 敵襲! 敵襲ーっ!」
無論目を引く効果は残ってるので、がっつり内部にバレます。おかげで館に飛び込むなり妖精メイドが津波のごとく向かってきますが、その効果があったからこそ美鈴さんの横を通り抜けられたのでトントンです。さーて、頑張って盗むぞー。
「――すごいすごい! 何今の! 眩しくて、何だか力が漲って……気づいたら、貴女が敷地の中に! あれが手品ってやつ!?」
妖精メイドだからといって、侮らないようにしましょう。閃光爆弾は月の光で作られており、月の光は妖力を増幅します。普通の妖精はともかく、向日葵以上の妖精が浴びると普段より強くなることがあります。というかこんだけ妖精いたら絶対に十匹は強いのが来ます。ナゾキノコ閃光爆弾ならそんな問題も起きないんですけどね。スピード重視で置いてきました。
そんなの相手してられないので、天井が高いのを利用し、さっさと七里ジャンプで包囲の薄いところを突き抜けていきましょう。特にドリル金髪みたいな腰紐してる紫髪赤リボンは絶対にスルーします。厄介な強さの上にイベント「三重スパイの活用法」の起点なので。
「総員、撃てー! っ、突破された! 12班! そっちに行ったぞ!」
「あらら、危ない危ない。壺が割れるところだったわー」
「命を惜しむな、名をお締め! とーっ!」
あ、あれも不味いです。七里ロザリオパンチ!
「え」パァン「ああっ! よくもフォートを! 逃がさな」パァン「なぁにやってんですか! 距離を取って牽制に努め」パァン「えっ、あっ……きゃっ!」
ん? 外しました。まあ良いか、最後のは普通の妖精ですし……いや、なんか見覚えありますね。もしかして冒頭の雨妖精でしょうか。そんなわけないか、この館で働くのはちょっと無理がありますし。
「むぎゅ! なになに、なんかここにあ」パァン「我が賜りし木刀の味……その身に焼き付け」パァン「見えない……なのに能力にかかって……一体どういう」ピチューン
「わー! このお屋敷、楽しーい! 今まで押し入らなかったのが惜しいくらいだよ! 気分さいこー!」
さて、シルバーナイフがあるのは主にメイド長、十六夜咲夜の個人部屋です。「お嬢様と同じ階で寝るなど恐れ多い」派 VS 「優秀な道具は近くに置いておきたいの」派の熾烈な争いの結果、咲夜さんは二階の階段近くの部屋で寝ています。なぜなら最終的に「より優秀であるために、どこにでもアクセスしやすい場所に居るべきですわ」派が勝利したためです。これは言い返せない。
「追え! 追えーッ!」「捕まえろー!」「……? ! 転身ーっ!」「何だ何だー!」「この先は精鋭に任せろー!」「地下かー!」「地下だー!」「地下ぁー!?」「……ルナっ!」「あー! 待てこらバイトー! 命を無駄にするなー!」
しかし今回は部屋に向かう前にやることがあるので、まずは下へ参ります。そのへんのテーブルからクロスを剥ぎ取り、今持ってるお金を全額包みます。こういう絵の下にある細長いテーブルって、コンソールテーブルって言うらしいですね。最近知りました。
「……」「……」
(あー、楽しかった。……あれ? 声が……)
ここまで来るとガチ勢が増えてくるので、弾幕に容赦が無くなってきます。焦らず避けることを最優先に包みながら走りましょう。本来こんな段階で来るとこじゃないので、食らうとかなりの痛手です。危なければ法壁による防御も視野に入れましょう。
もちろん速攻も有効です。ロザリオパンチ。
「……ったあー! 嘘っ、何で私だって」ピチューン
「へー、面白い妖精だなあ。今度一緒に遊んでみよっと。お姉ちゃんも誘おうかな? 一人くらい、妖精のペットがいてもいいと思わない?」
「な……!」「訓練を思い出すの! いつも通り!」
そういえばロザリオの効果ですが、シンプルに「幻想特攻」です。ただしこの特攻だけ妙に強く、他が1.3倍に対して1.7倍となっています。攻撃力も低くはないので鍛えたらおそらくラストバトルまでこれで戦えます。戦えるだけなので勝つなら別のもん使ったほうがいいですが。
「放」パァン「さっさと引き返……早い!」「第二防衛ライン、突破されました!」「撃って撃って撃ちまくれ! 敵を通すな!」「ね? ね? 貴女もそう思うよねー。」
とと、ストップ。これ以上は進めません。感知されて奴が来ます。奴はちょっと流石に時間がかかりすぎるので、感知されたら即刻リセットです。何せ名の知れた魔女ですから。こっちのメインウェポン、初級魔法とパンチですよ。無茶です。
「最終防衛ラインも突破……されてない!?」「止まった!? 目的は妹様じゃないのか!」「不味い、この位置は巻き込まれる! 退避、退避ーっ!」「ねぇってば……もしもーし。はぁ、もう。」
というわけで、最後の仕上げ。
包んだお金を丸めまして。
「ね
ぇ
。いつまで気づいてないふりするの?
『意識的』に目を逸らしてるの、知ってるんだよ……っ!?」
囁いてくるこいしさんの胸元にお金を突っ込んで、感知ゾーンに投げ込みます。これで盗難判定が出てお金がゼロになりました。つまり再び金策アイテムが拾えるようになりました。
そのまま私は別ルートで逃走。地下室に行く道は一本ではなく、ここから二階へ直通のルートもあります。便利。後顧の憂いが無くなった今、そこから今度こそナイフを取りに行きます。あーばよとっつぁーん。
「泥棒が騒がしいと思ったら……いつぞやのさとりの妹。何しに来たのよ」
「ふ、ふふふふ。さあ、捨てられに来ちゃったかな」
「やってくれたわね! もう怒ったんだか……あれ? 誰?」
・
・
・
さーて、ようやく今日の……いや、とっくに明日ですか。この日初めての山場ですね。シルバースティーラー百瀬、走ります。
階段前に来たら、まずは鍵を開けねばなりません。ですがご安心。こちら変哲ナイフ、実は鍵開け用の器具もついた十徳なナイ……
あれ? おかしいですね。そんなに複雑な形してませんし、見なくても片手で器具は出せるはずなんですけど。あれ? ……あ?
…………
シルバースティーラー百瀬、止まります。
ナイフの柄をよく見ます。何か彫られてます。
『めりぃ』
……
…
……あ、あぁああああぁぁっああああぁぁぁぁあああ!!!
リ、リカバリ! 何を? どっ、どうする!? 鍵を開けられない場合なんて想定外なんですけど! 一旦退く? 冗談じゃありません! 次の日は下手すれば咲夜さんが起きています! 返してもらう? 不可能です! こいしさんからすれば私は今は見捨てた相手です、どんな目に遭うか分かったもんじゃない! となると一つ! 更に上へ向かいます!
「あわぁー! 私は違う! あれ! あれだから! ただの夏の思い出づくり!」「ハルは何ですか? フユの次です。ナツは何ですか? ハルの次です。じゃあ、ハルは終わりですか? 私は役目を果たしましたか?」「くふふ。私のテレポートラップ、抜けれるものなら抜け……あれ? いない」「やっぱり、ここのクッキーは美味しいわ。そういえば、何だか妙に騒がしくなってきたわね。あのメイドさんはすごく仕事に厳しそうだし、今日は早めに帰りましょう」
考えれば妙でした、こいしさんがあの火の前で立ち止まってたこと! 一緒に燃えたはずのナイフがほとんど煤でくすんでなかったこと! 包んだ布が全く暖まっていなかったこと! これは「変哲ナイフ」じゃありません、こいしさんの「メリーナイフ」です! あの時、出会った時から《《既にナイフがすり替えられていた》》んです! 理由!? 気になったからだろうなあ! 畜生、ちゃんと視点を合わせればよかった! 慣れって怖い!
「夜は吸血鬼の時間」
来ました! オラァ! 感知しろ!
「そして、吸血鬼は騒がない。
貴女が泥棒ね」
ふっ。そういうあんたは吸血鬼だね?
これでも推理は得意なのさ。
「今は館の主ってほうが重要よ。
さあ、盗んだものを出しなさい」
勘違いしてるな。今から盗むんだ。
盗品は新しいほど価値があるからな。
「ほうほう。いいことを聞いたわ。
じゃ、ちょっと試してみようか。お前の命で」
OK! 弾幕発射!
――というわけで、初のまともな戦闘!
VS レミリア・スカーレット、開幕です!