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彼女は、少しばかり救い過ぎた。
どうにもならなくなるような、そんな状況に追い込まれても、何の根拠もなく、何の対処もなく、ただただ生きている。

どんな状況からでも、どうにでもなる。
誰かと争う必要もない、私たちは個人だ。
ならば何故、何かをする必要があるのだろうか?

それは証明されていないからだ。
信じることは楽だったか、人形。

これも捨てよう。これも。これも。ひどい痛みも、饐えた匂いも、ぜんぶぜんぶ、行動の対価なんだ。

なにもしないわたしが、なにかもつことをゆるさない。

だから、このいのちだって。

自殺志願者の肉って、美味しくないらしいよ。
そもそも食うところが無いって話でもあるけれど。

よかった。
意識が遠のいてく。
私は死ねるみたいだ。

遺書は書いた。
友達は説得した。
世論も、もう反論は来なかった。
だって私が決めたルールなんだから。

それなりに楽しかった。でも、私はもう眠いんだ。

死んだ私が無価値であると感じて、私は安堵した。
何もしない人間を生かしていけるほど、社会は優しくない。
それでよかったと、ようやく心の底から思えたんだ。
無価値を排除できて、社会がこれからも何もなく回っていける未来を信じられて。

ああ、社会は間違ってない。
そんな社会の中に、一瞬だけでもいられたんだ。
これが喜びでなくて、何だ。

結局はお前自身が間違ってないと、そう思いたかったんだ。