up:: Kakutan
頻度が高い脆性として水素脆化と水素浸食の二つがある。
水素脆化は水素が金属に作用すると靭性が低下、応力に対しリバーパターンを生成しつつ突然の破断、脆性破壊が起こりやすくなること。
この現象は強度が高いほど、特に引っ張り強さが高いハイテン金属において起こりやすい。
メカニズムは不明。
- 水素原子と金属の結合で内部圧力が減少
- 水素原子が鉄分子の結合を妨害
等の可能性が示されている。
特に腐食、溶接、酸洗浄、電気メッキなど行った際によく吸収される。
対処として190220℃で2時間24時間加熱するベーキング処理がある。
水素浸食は別現象。脆化は幅広い温度域で起こるが、浸食は高温高圧時のみ。
特に200℃以上の高圧水素は注意。
浸食では水素が鋼中の炭化物と反応しメタンガスが発生することで、鋼内部に多数の微細亀裂が生じ脆くなる。
また炭素が失われると鋼は脱炭状態になり、溶接しても従来通りの強度が出せなくなる。
こちらは防止可能。炭化物を水素以上の安定度で作ればいい。
というわけでCr・Mo・Nb・Ti・Vなどを添加する。
添加しすぎると耐熱側に問題が出るので、米国石油学会(API)作成ネルソン線図を参照。
また、水素関連の金属損傷はほかにもある。
湿潤H2S環境(サワー環境)では、水素誘起割れという脆化の亜種が起きる。
これは応力が無くても割れる。超音波探傷試験で検査。
溶接低温割れ。溶接時に水素が影響。
溶接冷却後、数十時間から数十日後に発生。溶接棒の湿分管理と余熱で水素を飛ばす。
応力腐食割れ。割れの先端が溶解するので、引っ張り応力に応じどんどん割れる。
水素だけでなくCO2、O2が関連してるとか。
他、ステンレスやクラッド鋼(二種の金属を貼り合わせた鋼材。耐摩耗、耐化学腐食、原子レベルの圧着。発電所や鍋で使われる)も水素は破壊できるとか。
これがあるから水素発電は難しいらしい。
水素脆化と水素侵食―水素が引き起こす2つの損傷現象 - NISSHA
水素脆性とは?原因から対策までを徹底解説 - NISSHA
水素侵食・水素脆化 | 高圧ガス保安協会
水素吸蔵合金か高圧タンク、扱いにくい水素の性質とその貯蔵方法