「信頼だからまずいんだよ!モノホンってことじゃん!」
「偽物よ、あれは」
そう言って封獣は床にめり込んだ葉っぱを指さした。その裏には黒い粒がくっついている。
「ほんのジョークよ、ジョーク。鵺的スネークジョーク」
「どのへんがジョーク!?」
「参加したら大物を倒せるかもねー」
「祭りの射的で勝ってもなあ」
「仏教にも安息日は必要だと思わない?」
「悟れば毎日が安息って教えだろ、仏教」
「こちら日本酒のデザイアドライブ割りです」
「何が割れたんだよ、鬼殺ししか入れてねーだろこれ」
「意見かな」
「この場の縮図を酒で作るな」
幻想郷の鬼殺しはその名に恥じず、本当に鬼を殺せそうなぐらいに度数が高い。
ここの酒飲みは妖怪や神なんかが多く、それに対応するために高めていったら収拾がつかなくなったとか。
おかげで顧客が倍に増えて店主はホクホク顔らしいが、その度数の高さゆえ初心者には飲むのが厳しいのも事実だ。
私も名前に鬼と付いているが鬼ではないので、酒に関しては初心者である。
「ついでに紅魔館を見て回ると言いまして」
「でもそれはメイド長が許さなくて」
「ただいま戦闘中です」
「ならしょうがないね」
耳を澄ますと、カカカッというナイフの刺さる音。それがだんだん大きくなっていく。……え?
「で、メイド長そのままこちらまでそいつを誘導するつもりで」
「部屋の前の廊下はその通路ですので」
「避難してきました」
え、なんの冗談だよ。こっちにナイフの海が来るってことじゃん、それ。つーか厄介払いじゃないか。
「……あなた達、馬鹿?ここに来るのなら隣の部屋に避難しなさいよ」
封獣が言葉を吐く。
その言葉を聞いた妖精メイドたちがざわつきだす。
言われてみたらそのとおりだー
さすが封獣様、頭が切れますー
「ブラッディメアリーは頼んだらお嬢様に怒られるんですよ」
「どうして?」
「『主の他にトマトジュースを飲むとは何事か』っつって」
「ガキですねえ」
こいしが叫ぶ。うるさい。もうお前絶対無意識で動いてないだろ。
「ツイストダガー持ちながら言われて説得力が増す殺意以外の言葉なんて初めて聞いたよ」
「お客様の旺盛な知識欲を満たせたようで何よりですわ」
未来永劫使わない知識になんの価値があるんだ。御阿礼の子供でも捨てるぞこんな記憶。