「それで、やることはおしまい。だからボクは帰ってきたんだ」
 「……そう。お疲れ様」
 レミリアは彼女に優しく声をかけた。
 「ああ、楽しみだな。吸血鬼の体に馴染むために500年弱もいるのは癪だけど、その間いくらだってレミリア様に会えるんだから」
 しゅる、しゅるという衣擦れの音が、いやに大きく聞こえる。けれど、レミリアの眉を顰めさせていたのはそんなことではなかった。
 「六人も殺すのは大変だったけれど、それだけのかいがあったってものだね」
 彼女がクローゼットの黄色いスカーフを手にとり、なれた手つきで首に巻きつける。その動作には、ともすれば美しさすら感じられた。
 「おっと、もうレミリア様じゃないか。話し方も淑女らしくしていかないと」
 ナイトキャップをつかまえ、ふわりとレミリアの方へ向き直る。顔には、もはや隠し切れないといったような、笑顔。
 
 「ねぇ。これからよろしくね、お姉様」
 
 
 
 「ああ、よろしく。フランドール・スカーレット」