「……ナシン……2%……」
朦朧とした意識に、くぐもった声が響く。水とアクリル板を通したような、揺らいだ音。
「……カルアー……7%。……ん?」
視界はまだぼやけたままだ。目を擦ろうと腕を引く、しかし動かない。見れば、腕にはいくつものコードが絡みつき封じられている。そのうちの何本かは腕の中に入っていて、無理に引けば体に良くなさそうだった。
「……あー……?」
「早……ちょ……お袋! 逃げんな今更!」
何が起きているのか、アクリル板の向こうで騒ぐ何かに聞こうと声を上げる。だがその声は妙に高く、自分以外の誰かと被ったのかと辺りを見回してみる。誰もいない。そもそも腕を振り回すのがやっとであろうこの部屋、いや最早ロッカーのごときここに自分以外がいるとは思えない。そこまで考え、ようやく異常に気がついていく。
ロッカーのような狭い部屋、腰から下が触手になった自分。壁一面のアクリル板、その向こうの水に満たされた部屋。そこで取っ組み合う二匹の、自分と同じ触手の怪物。
「……!!!??」
「
円筒状のアクリルが、仄かな青い光で照らされる。アクリル内部の人影。パネルやキーボードを操作する人々。ごぼごぼとくぐもった声が響く。
アクリルに変化があった。内部のコードが揺れたのだ。そのコードは人影の腕に絡みついているうちの一本で、すぐにその原因は機械の振動などではないと分かる。
二度、三度と揺れる。確かに人影の腕が動いていた。
人影は薄く目を開き、ゆっくりと辺りを見回した。それは警戒や好奇心というより、ただ忘れたことを思い出すような動きだ。何があったか、どうしてここにいるのか――あるいは、どうやって身体を動かせばいいのか。