夢を見た。
 フランちゃんが突っ走って、正邪ちゃんが引き止めて、ぬえちゃんが諌める話。
 もちろんフランちゃんはいい子だから、おとなしく止まる。そうして慎重に確実に進んでいって、最後には必ず誰もが思うハッピーエンドに繋げるのだ。
 筆は同じ新品に変わり。
 家はちゃんと掃除され。
 花火はとても綺麗だった。
 何よりも美しいのは――そこに、私がいないことだ。
 
 ただの夢を見た。
 皆はいつもと変わらない。
 お燐もお空も笑顔で生きてるし、お姉ちゃんも気味の悪い笑みを浮かべながら小説を捲っている日常。
 旧都では今日も妖怪たちが勇儀ちゃんに吹き飛ばされ、そんな様子を見ながら春を感じるパルスィ。
 轟音と地震を子守唄に、丁寧に編んだハンモックで眠りこけるヤマメや、その横にちゃっかりスペースをとって寝ているキスメ。
 
 でも、やっぱり、私は居ない。
 
 楽しい夢を見たんだ。
 とても気持ちが良くて、桜に自由に思いを馳せることだって出来て、孤独なんて感じるはずもなくて、みんな幸せで、私もそれに満足してて、それで――
 
 

 終わりか?
 

 
 ……うん、それで終わり。だって、その先はわからないもの。
 
 気にならないのか?
 
 いいよ、別に。もう未練なんてない。
 これだけ暴れたんだ。私の居場所は牢獄だけだよ。
 
 そうか、そうか。物分りのいい子だ。
 そんな子には罰を与えなくちゃな。
 
 あはっ、罰ですって?これ以上に酷い罰なんてないよ。
 心の痛みは体の痛みに勝てやしない。
 
 安心しな。これよりもっと残酷で、もっと痛んで、もっと後悔する罰だ。
 
 だからさ。

 
 
 「さっさと出てこい自己完結女ァァァああああ!!」