「らっしゃー……お好きなお席にどうぞ」
「ああ、座る前に聞きたいんだけど。あさりは素揚げと酒蒸し、どっちが好き?」
うづのあさぎ。略してうさぎ。
四番地の料理店『空上丁』(からかみてい)のオーナーシェフ。
好き嫌いを聞いたうえで、嫌いな調理法をわざわざ選んで美味しく食べさせる嫌なやつ。気分屋のくせに気分を考慮せず、なのにちゃんと美味しいからほんとひどい。君、フィス?
専攻は読心術。ただ読めるだけなので別言語で話されると珍しく焦る。まあ、十五ヵ国語知ってる彼女に知らない言語なんてまず無いが。そのせいでよく艇教に資料を持ち込まれる。仕込みの時間に持ち込まれるとキレる。
わざと誤字るとつい突っ込む。一番焦るのは知ってる言語を知らない文字を想定しながら話されたとき。
え? 妙に共通言語が流行ってるナカリアに別言語があるのか? ……あるのか?