さりとて、暇なものは暇なのだ。
 「んーっ、……はぁ。」
 逆立ちをしたまま伸びをして、私はそう言ってやった。
 「そう思うんなら、正邪も参加したらいいのに。最近の異変は来るもの拒まず、よ?」
 よ、じゃねえよ。お前参加してないだろ、フランドール。
 「いいの。私は殿堂入りだから」
 「弾幕ならまだしも、殴りあいアリだと死人出しそうだもんな、お前」
 「たまに気にしてることをストレートに刺すわよね、貴女」
 「お前が気にしすぎなんだよ。幻想郷の奴らが『あらゆるものを破壊する』程度で死ぬものか」
 「正邪……」
 おい、チョロ過ぎないか、悪魔の妹。この場面がメイド長に見つかって誤解されたらどうするつもりだ。
 「そうそう、何なら私がタッグ組んであげるよ。もちろん私がスレイブ、フランちゃんはカメラ」
 「こいし……」
 気づけフランドール、その位置は戦力外通告だ。カタカナに騙されるな。あの天狗と同レベルだぞ。
 「そんなに厄介な能力なら封じればいいじゃない。例えばそうね、ここに村で人気のお札があります」
 「ぬ」
 「待てぇぇい!!それはしまえぇぇ!」
 逆立ちの体勢から腕の力で封獣のもとまでジャンプ。そのまま札を蹴り落とす。
 「なにすんのよ、もしかしてオーソドックスに竹林の薬がお好み?それとも茸派?」
 「お前、そのラインナップはわざとだろ!何とは言わないけども!」
 次々と封獣の懐から出てくるアイテムを、私はひたすら叩き落とした。薬ビン、陰茸、ピンクの本、携帯、宝塔、兎の目。
 「……こいし、あれ何の話?」
 「誰かの理想の話」
 「理想は所詮妄想よ。幻想には勝てない」
 「だからってここに持ち込んでんじゃねーよ!どうすんだよこれ!」
 地面に散らばったジョーカーたち。どれも単体だけで幻想郷支配は容易だろう。私は絶対使わねえがな!どうなるか知ってるから!
 「次来た客に全部渡すわ」
 「新しい支配者を生み出す気かお前はァァァ!」
 広い広い紅の館に、私の声はよく響いた。