「―というわけで、改めてはじめまして。赤河童のみとりと申します。種族は河童。所属は地霊殿です。」
 危うくセットで殺されるところだった。外敵に敏感なのはいいのだが後先考えて欲しい。
 なにせどいつもこいつも戦闘能力は一級品なのだ。私が止めるには少々無理がある。こいしが呼んだやつだと理解するのが一秒遅ければ、下手すればまた医者の世話になるところだった。
 「みとりちゃんはなんと!河童の中でも天才と呼ばれた河童なのだ!いわば河童の中の河童!すごいでしょ!すごくない!?」
 「ここに来てる時点でろくでもない天才確定だがな」
 耳を塞ぎながら私は言った。ここがなんて言われてるか知ってるか。幻想郷の火薬庫だぞ。いまなら禍厄もついてくる。そんなところにこいつは何をしに来たのかというと、
 「正邪、これから加わるメンバーに厳しすぎるわよ。」
 そう。
 なんとこの集団に入るためだと言うのだ。
 
 
 「ふつつか者ですがよろしくお願いします。」
 そう言って頭を下げた赤河童の体はとても大きく見えた。当然だ。私はもちろん、ここのメイド長よりも明らかにこいつは背が高い。おまけに服のほとんどが赤色でゆったりしているのでさらに巨大に見える。それに糸目は似合わないんじゃないか。
 「ええ、よろしく。じゃあ、こっちも紹介しましょう。私はフランドール・スカーレット。種族は吸血鬼。この紅魔館の主の妹で、こいしの親友よ。そしてあっちが……」
 「封獣ぬえ」
 やる気ナシか。
 「……封獣ぬえ。種族は鵺。所属は命蓮寺。」
 心を読まれたのか険しい目つきで睨まれた。無論殺気交じりだ。いつものことなので無視とする。
 「最後は私か。といっても、私は知ってるんじゃないか?」
 というか、知らないとおかしい。何せ私は一度指名手配されているのだ。その割になぜかあの十日間から全く狙われなくなったが、それでもかなりの有名人のはずだし――
 「……いえ、恥ずかしながら知りません。失礼ですが、紹介お願いできますか?」
 「……」
 どうやらおかしい側の河童だったようだ。しょうがなかった。でもそう頼まれると天邪鬼の血が囁く。やらなくていいぞ。やる必要なんてないんだ。
 「正邪ちゃん」
 「正邪」
 「殺すぞ」
 「……鬼人正邪だ。所属なし、種族は天邪鬼。輝針城異変の主犯だ。そして後で表出ろ封獣。」
 「……ふん」
 当然のごとくそっぽを向いた。本当、私の何が気に食わないのか。私は嫌われるのは好きだが殺気を向けられるのは嫌いなのだ。
 「ほほう、それはそれは興味深いですね。ぜひともいつかその話は聞きたいものです。」
 「面白い話ではないがな」
 「どっちもinterestingなのに」
 「あなたが入るとややこしくなるからやめなさい、こいし」
 物腰柔らかに封獣が言う。私以外にはこれだ。別にあの対応をされたいわけではないが、微妙に腹立つ。
 「ええ、了解しました。それでは、本題に入りましょうか。」
 「何?本題だと?」
 「ええ。」