誰かに代わりに自分を話させるだなんて、卑怯じゃないか。だから僕は、僕の言葉でそれを記そうと思う。俺じゃなく、僕の言葉で。
 核心を抉ろう。
 
 
 僕はまだ帰って来ていない。
 確か四歳、幼稚園の頃だった。あの頃からすでに文字が好きで、他人に興味なんて抱けなかった。

 僕が死んだのなら、それは誰のせいでもない。きっかけはどこにでもある。いつのまにか、それが僕をも切り欠いただけだ。だから犯人と呼ぶなら僕をも含めた全てがそうで、けれど全てに罪はない。それらが偶然重なった、あるいは奇跡と呼べることなのだ。
 ただ、死んだことは奇跡でも、それで生まれる悲しみや憤りや不幸は奇跡でない。縁を切りきれなかった僕の責任だ。もしもそんな人がいたら、僕はあなたに詫びたい。うまくできなくて、ごめんなさい。
 もしも死んでいなかったなら、死ぬという選択も出来なかった僕はきっと弱いものなんだ。

 二十年だ。
 何も変わらないのに、十分な時間だ。