たっ、たっ、た。
もう日も登ろうかという幻想郷で、不思議と軽やかな足音がする。
たっ、たっ、た。
妖怪ではない。人間でもない。格好はまるで一昔前の探偵のよう。キャスケットに白いシャツ、格子柄のストールと茶色の短パン。少し焼けた肌のような色のショルダーバッグを掛けている。
そして背中に、小さな羽。
たっ、たっ、――ざざっ。
足音が不意に止んだ。
その足音の主、彼女の目の前には――
「ついに見つけた……!」
野を越え、谷越え、三千里。苦節三日、ようやく僕は辿り着いた!この自然豊かな幻想郷で、不自然なほどに紅いこの館。見間違えようはない、まさしくここが!
「いや、でも安心はできないか。えーっと、全貌図全貌図……」
緋褪色のショルダーバッグから、大事な紙を取り出す。忘れっぽい僕の為に、友達が作ってくれた館の肖像画。このバッグと同じぐらい大事な僕の宝物だ。
「うん、場所も雰囲気もそっくりそのまま!よし、いくぞー!」
僕は意気込みを新たにして、朝日を反射して明るく光る紅魔館を見上げたのだ!