大真面目な話だった。

「祭り?」
「そーさそーさ! 名前は星落祭、場所はナカリア全域! 溜め込んだ研究成果、ちょっとお見せするお祭りだとも」
「普段のナカリア上空には光を抑える処理があるのだがな。この三日間だけはそれを解除し、外の世界にも光を当てる。空を飛ぶ発明を引き立てる処理だ」
「すっごい楽しそうじゃないですか!」

 テーブル拭きを越えたテーブル磨きにいそしんでいた頃のことだった。いつものように私たちの城に高目が立ち入ったと思いきや、その後ろをついてくる新参者。そして二人の手には空分解性のビラ。上からの指令でも持ってきたか、すわ果たし状のセット販売かと思いきや、全然そんなことはなかった。私たちに必要な情報だ、功績的な意味で。

「いくつもの研究が形を伴う、ナカリア三大祭の一つだ。ここで他の発明よりも目立てば、上への道が開けることもある。現にこの前の奴らはそうやって呼ばれていたらしい。あの発明は、上へ至る前、最後の星落祭の準備だったというわけだ」
「急に罪悪感が湧くなあ」

 この前の奴らを思い返し、その研究を考える。熱を喰らう微半生物。それでどうやって祭りに参加するつもりだったのだろう。それともここの祭りは何も盛り上げるだけが参加ではないのか。そう言えば私の消えた記憶にもそんな人がいた気がする。たとえばそう、少しだけ会場から離れた川の近くで手持ち花火を振り回していたりとか。思えば私がアンドロイドでなかったら火傷してたな、あれ。

「今更ですよ、マスター。他への迷惑を読み切らなかったやつが悪いんですから」
「そうだぜマスター。気にすんなよ、あいつにゃよーく言い聞かせとくから」
「楢名はどの立場でしゃべってるんだい?」
「面会人だよう。あの人は個人的に好きになったからね。部屋番も分かってるんだ」

 ちら、と楢名のポーチを見てみる。そこには昨日まで無かったドッグタグの様なキーホルダーが引っかかっており、何かが数百文字書かれている。なんだか暗号のように思えたのでつい解読する。そこには数桁の数字が浮かび上がった。うん。

「……脱獄させないでよ」
「脱獄できないでくださいね」
「可能性の否定!?」
「本題に入るぞ。お前たちも当然、星落祭に何かを展示するのだろう。だが三日間、昼夜問わずその展示を維持するのは難しい。シフトを組むのが最適だ」
「つまりここに、シフトの打診をしに来たのかい」
「そうだ。お前は改心したとはいえ、発明品そのものが他に悪影響を及ぼす。組めるとすれば、私くらいしかいない」
「それとあっしさね。組み入れちゃえば怖かないし」

ひつようなもの
上を目指す理由@梁先