ベッドマン:祝勝会…彼女は、ついに動くな。
…っ!?
誰だ?近づいてくる。まさか…
アクセル=ロウ!?
アクセル :あら、バレちゃった?
ベッドマン:…どうやってここに?
アクセル :よく聞かれるけどねぇ。正直なところ、自分じゃわからないのよ。
でもまぁ、あんたに会いに来たのは確かだ。
ベッドマン:どうやら…厄介の種が蕾に成長したらしいな。
アクセル :そんなに構えないでよ。あんたの意見を聞きに来ただけなんだからさ…
ベッドマン:ならそれは…もっと親しい友人に聞くべきだった。
因果律干渉体…我々が最も危険視している存在。真っ先に排除すべき存在を、お話だけで帰すと思うのか?
アクセル :あー、やっぱりねー。その反応、わかってたよ〜ん。
ベッドマン:恐れていないな…僕を。
なるほど…大きな力を手にし、調子に乗ってヒーロー気取りってわけか。
アクセル :だーかーら。戦いに来たんじゃないって。
ベッドマン:ならなんだ?仲間に入れて欲しいようにも見えないが。
アクセル :…
アクセル :俺のこの力は大きすぎる。ただ邪魔なんだ。でもそれを否定するってことは…自分自身を否定するのと一緒らしい。
おたくらは俺の逆で、力を欲しがってる。
それならさ…あんたは自分の何を肯定したいんだ?
ベッドマン:わからないな。僕らの邪魔をする気がないなら、なぜそんなことを聞く?
僕を説得でもするつもりか?
アクセル :ははっ、それは、あわよくばってやつだ。
だけど、俺の望みはもーっとささやかなもんだ。
元の時代に…いや…
…もう一度だけでいい。めぐみに会いたいだけなんだ。
ベッドマン:…めぐみ?
アクセル :置いてけぼりにしちまった、…まー家族みたいなもんだ。
でももし、その望みが叶うのと引き換えに、世界が崩壊するとしたら?
俺がもし…そんな狂気の答えを選んだとしたら…
…そう考えてたら、あんたの話が聞いてみたくなったんだ。
ベッドマン:…
本気でそんなことを聞くためだけに?
アクセル :うん。
ベッドマン:僕に殺されるかもしれないのに?
アクセル :わかってる。
ベッドマン:…
やれやれ、おそれいったよ。
アクセル :…?
ベッドマン:僕の素性も知らずにそんな話題を振るなんて…大した生存本能だと言ってるのさ。
妹に会いたいんだ。僕もね。
僕達兄妹は、生まれつき思考能力が高すぎて、脳が耐えられなかった。
だからこうして、夢の中に居場所を見つけたんだ。
僕は慈悲無き啓示と出会い、現世に干渉する術を得たが…妹のディライラは母親の顔すら知らず、未だに夢の世界を漂っている。
人のぬくもりすら知らない。
ならば誰が彼女を抱きしめてやれる?
アクセル :…
…ど、
どういうことだよ。いま世界を騒がせてる事件は全部、その妹さんのためだってのか?
ベッドマン:僕にとってはね。無論、計画の全貌はもっと大きな意義を持つものだが。
…そのために、絶対確定世界が必要なのさ。
アクセル :あんたはそのために…他の誰かを犠牲にすることも厭わないのか?
ベッドマン:僕を殺し屋か何かと思うのはやめてもらいたいな。
アクセル :そうじゃないってアピールは初めて聞いた。
ベッドマン:手段を選んでいないように見えるのは無理もないが…
今の君なら、薄々理解できるんじゃないか?
このバックヤードという空間は…人が寝ているときに見る夢と繋がっている。
だから夢で起きる現象を想像してみれば、わかりやすいだろう。
そこが夢だと気づいていれば、人はある程度世界をコントロールできる。しかし、とりとめもなく脈絡もなく、結実しない。そんな経験はないかい?
アクセル :明晰夢…?
ベッドマン:そのとおりだ。そんな専門用語を知っているとは驚きだけどね。
僕は夢の中ならば、あらゆる事象を実現させられるが、生物の死以外は長く続かない。
しかし、絶対確定世界は夢と現実の境界が曖昧になる時だ。
その時ならば、僕の行いを現世に定着させることができる。
つまり妹を…そして、今まで殺してきた人間も、全て元の生活に戻すことができるんだ。
だから僕は、手にかける人物の素性は全て記憶してきた…街の人間も全てね。
アクセル :あんた…
ベッドマン:最初の質問だが…僕が肯定するのは妹がいる世界だけだ。
君の境遇には同情するが…もし妹との再会を阻むようなら…
…その時は、もう見逃すことはないと思ってくれ。