八階堂高目は怪物である。
「今日は曇りか」
何故なら、彼女の行動は
何者にも強制できないから。
「おや、珍しいですな。常に一週間分の天気を暗記しておられるあなたが」
「予報は予報だ。外れる日もある。今日がそうではないかと期待しただけだ」
分厚く空を覆う雲は、さながら配送サービスに割れ物注意を十回くらい書き込んだときの緩衝材のごとく。
それをガラス戸からちらりと流し見た《《白髪の少女》》は、横を通り過ぎていく。他にやる事があるから。
「消耗品の購入ですかな。であれば、配送を手配しておきますが」
「消耗か、遠からずだな。今日は壁に挑む日だ」
「おや……それは失礼致しました。予定を読み直しておきます」