「そこで私も考えたわけだ。複数人って強いんじゃね?」
「発想が愚か者のソレね。一と一は常に二になる訳じゃないのよ」
「よっしゃあ成功!ようわた……」
「なるほど――ごきげんよう、皆様方。私、鬼人正邪と申します」
「私の親は申しました。清濁併せ呑む妖怪になれと」
「どうしてこんなモノに執着するのでしょうか。本当に理解しがたい」
『ここは私の別荘
前線基地だ』
「別荘っつった!今別荘っつったよな!」
『助けるわけがない さっさと帰れ』
『同族のよしみとか 友達割引とか そういうのないから』
『お帰り下さいませ お出口はあちらです』
『パンはパンだ 変わりようがない』
『あい らぶ ざ むーん!』
「あのババア、服飾センス壊滅してんな」
「こら、正邪。女神様に向けてそんな言い方はないでしょ」
「じゃあお前、これ着たかったか?」
「明言を拒否するわ」
「だろ?」
「はっ!新技の披露ができるってもんだぜ!くらえ!『質量とエネルギーを』……」
「ぜぇぇぇぇぇいいい!!」
「爆風は何も傷つけることはなかった!!」
いや、出せるわけ無いだろ。そもそも月面じゃ出せないし。
魔界の瘴気の中身を知ってるか?あれ、穢れなんだぞ。魔界に入って気分悪くなるの、魔力が濃い上に穢れが濃いからなんだぞ。そんなとこで暮らしてたあいつ呼んでみろ。鴨うちだよ、鴨撃ち。
……あれ、何でそんなこと知ってんだっけ?
「そうじゃねえ」「そうではない」
「ちょっと? 話が違うわよ? この子の中身、満ち満ちてるんだけど」
「直前で身代わりを立てるとは……抜け目の無い奴め。どこまでこちらを知っている……?」
「奇妙だ。穢れが少ない」
「お前だけだ、天邪鬼」
「お前だけ、生きていない」
願ったんだ。
救いの代わりに、罰を。
「虚の体には神が宿りやすい。ああ、本当に都合がよかったわけね」
「決まっているでしょう。あなたにしか聞けない事がありますもの」
「……同じ顔でその話し方されると、きめぇな」
「あの方たちの名前を聞きたいの」
「はあ、それぐらいいいけどよ。何に使うんだ?」
「見てなさいな」
「封獣ぬえっ!古明地こいしぃ!フランドール・スカーレットォ!」
「私、鬼人正邪はっ!てめーらに!一対一の決闘を申しこぉぉぉむ!」
「わかってるよ、私の生き方が敵しか生まないことくらい」
「勝てねえからやめる?意味がないから挑まない?ムキになったらカッコがつかねえ?」
「違う、違う、違うよなぁ!そんなものは考えてなかったろう?思い起こせ、なんでお前はこんなことを始めた!?」
ああ、そうだった。
見返してやるとか、認められたいとか、そんなんじゃなかった。
誰かに勝てないことが。
勝つために努力を続けることが。
その努力で分かった、何もかもが。
私は、そうだ。
楽しかったんだ。
「生き方だけはひっくり返せねぇさ」
あァ、クソが。こんなの私の柄じゃねェ!
「私はお前らの味方じゃねえ」
その姿は、まるで日輪のように。
「いつだって私は気に入らねえ奴の敵だ!」
「やっぱり。泥がついてる方が、綺麗ね」
「なあ、お前。私なんだろう?それなら、これ」
「絶対に使う日が来る。私なら分かるはずだ。それまでずっと持ってろ。離すんじゃないぞ」