続々参戦山修行

この捕まえた瑕穢を……あの日の渦に打ち込む!
集え!

「待て! 俺と戦え、ブロンドォ!」

 これも想定内?

 ――馬鹿! 馬鹿!

 そんなわけがあるものか! こんな事、私は想定していない!
 こうなった以上全てを隠し通せるわけじゃない、百々世殿にはある程度まで情報を公開しなくちゃいけない。でも、一体どこまで? 全てを教えるわけにはいかない。百々世殿は本来龍を食らう大怪蟲だ。今現在の彼女に頭脳労働はあまり向いていないとはいえ、それは遙か先までそうであり続けるとは限らない。死んでは生まれ記憶を欠落させるあの不自然な冷気とは違うのだ。山の秘密、それを教えてしまえば、彼女はいつか幻想郷の最高神、龍神ですら喰らい殺せる程の力を秘めている。
 あるいは、これは杞憂かもしれない。それを知りながらも、八雲紫は彼女を幻想郷から弾き出していないのだ。全てを受け入れると言っても、彼女は戦争や飢饉や隕石といった本当の滅びは否定している。逆に言えば、そこにいる限り滅びはしないと彼女は考えているのだ。

 それでも、ここは幻想郷。杞の国の人間が真に恐れたのは、信じた常識が意味を成さなくなること。ジョーカーに溢れたこの世界で、どうしてそれが起きない保証がある? 何よりも、そう成ってしまった世界では、私はどうして他人へ愉悦する暇がある!

 そう考えた典は、二人の後を追った。途中で出会った河童に訊き、通信機器を一つ借りる。周波数を合わせ、直接通信する。その数字は知りながらも、普段は使うわけに行かなかった。それは防災無線。山火事などの大災害が起きた際、全ての山の妖怪へ通達するために使う公開通信である。

 喉を化かす。声を変える。出来る限りに、わざとらしく。

『――テスト通信です。総員に告ぐ。山内部で崩落発生。い-305付近への接近を禁ずる』

 
い-305は存在しない。
テストであるならば、存在しない場所を指定するのはおかしくない。

だが、《《存在しない理由を知る者》》にとって、その指定は意味を持つ。
い-305。

それは虹龍洞のそばにある為、閉鎖した山道だった。

「――典。そこに、いるのか」

 

 自らの作り上げた物語に溺れ、恐怖に心が囚われる。
 そのことに彼女は、まだ、気づいていない。

管を巻く
とりとめもないこと、また、不平などをくどくど言う。泥酔した状態などについていう。

菅牧典は三重スパイでクッソ忙しいので、ほうぼうで仕事を効率化しています。

人が苦しむ姿を見て愉悦する奴が、その実本当の恐怖を知らないだけっていうのなんだか興奮しませんか?

「速えな! けど、飯綱丸ほどじゃない。俺なら追いつける!」

 うっそだろお前……! 振り切れない!
 ならば壁切り! ミスディレクション!

「マイン……ブラストォ!」

 あぁ!? 壁が豆腐みたいにぶち抜かれてる!
 
 

 えぇ……勝手に付いてきてそれ言う?
 河童の裏工房は最高技術者の巣窟です。ここで強いって、外でも規格外に強いモブなんですが……

 ……うーん。これは早めに切り離したほうがいいですね。いつ矛先がこっちに向くかわかりません。

「そうだ、お前も相応に強いんだよな」

 おっと手が滑って緊急AI兵士射出口を開いてしまったぁ。