「仮に、あれをアルファと呼びましょう」

「1. アルファは目に見えない。周囲の物体に一切歪みがないため、光の屈折もおそらく行っていない」

「2. アルファは肥大化している。時速で言うなら10km程度、走れば振り切れる」

「3. アルファは触れた人間を消滅させる。指一本でも触れれば即座に全身が消滅する。一方、その他の物体は全く影響がない」

「4. アルファは室内に入ってこない。……今のところは」

「……なんだって、こんな怪物が出るのかしら」

「……ほんとだよ。知る限り、五番地ウチにこんなのはいない……」

「……なおかつ、なんだってあなたが一緒なのかしら」

「……アスピリンが切れてね。温めてた夕飯レシピの材料ついでに、買いに行ったところだった。で、突っかかってきたのが君だ」

「いや、突っかかってきたのはあなたよ」

「たまたま昼の食事処が被っただけの気がするんだけど」

「同じものを注文して、同じエクストラにしたわ」

「一番人気の商品なんだから被ってもおかしくないよ」

「しかも犯行は全て隣の席で行われたわ」

「混雑してたからね。仮にテーブル席でも同じの注文してたよ」

「そして私達はカップルと思われて値引きをいただいたわ」

「ポップ見て高らかに宣言してたのは君だったよ」

「会計を済ませて、広場で一緒に買ったカップルアイスクリームを食べてたときだった」

「……ああ、そういう意味だったのか。迷惑料かと思って普通に離れて食べてた」

「広場の人間が一人、いきなり消えた。そして二人目が消えた瞬間、あなたはこちらに駆け出してきたわ」

「消えた地点から見て、君の方が逃げやすい道だからだよ。