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自分の名前を刻んだナイフ
その一歩を踏み入れた時、私は、その幻想に散り散りになった。
無数の夢があった。その一つ一つに、それに合わせた私がいた。
私は、その全てに通じて、私を複製した。そのつもりでいた。
私は、一人で、一つだ。
複製なんてしていない。
いつだって、そのたった一つに詰まった私を分割している。
無数の夢の中の私は、その分割した私がいないと動きはしない。
どんなにか些細なことでさえ、全ては私の手の上にある。
無数の私は、それが気に入らなかった。
一つの私を取り合った。
それで元の私がいなくなったとしても。
私の欠片、あるいは塵を、一生大事に握りしめて。
ああ、明日も生きていけるのだと、そう安堵した振りをして。
そうして、私は――
……なんだ、今のは。
私は、ここにいる。そうだ、ろう?
体を薄切りにされて、その断面を環視に巻かれているような……
気味の、悪さ。
私は、何をした。
どうやって……戻ってきた?
私は平気だぜ。
オニオン構造、絶賛雇用中。
いままさにじぶんをうみだしては、
そとへそとへとおしだしていく。
姿も形も言葉も責任も長さも重さも大きさも持たない中心が私。
そうだ。
例え、私が欠片になったとしても。
その全てを繋ぎ直し、私と呼べるものを形作った。
それと、私の偽物の違い。
私は、時間を持っている。
その一挙手を、一投足を、常に描きつけてきた私である事の証明を!
私は高目!
発明家、八階堂高目である!!
いつか、私でないことの証明が起きた時。
私が、記憶だけを持ち、本物の私と戦い、負けた時。
その時、私は何を言う?
それでも私は、私であると言うだろうか。
決まっている。
それでも、私は私である事を辞めることなどしない。
その時は、数値も、文字も、何も置かないだろう。
ただ仕切る。私と、そいつは別の「八階堂高目」なのだと。
それでも、席がただ一つだけだというなら。
私はそいつを倒す。
「八階堂高目」として。
私と私の偽物の違い。
私は今も、私を生きている。