あらゆるものを食らう獣。
何かを得たいという思いがあまりに強くなると、麒麟五家はこれになる可能性がある。
これを防ぐため、あえてゼロを食らわせて薄め弱体化させるという案を出したのは前任蘇鉄名。あと槙名。マイナスを食わせたほうがいい気がしてならないが、それだとやっぱり力に変えられるので。
サブ案として置いてたのが、はじめから犭貪になる麒麟を決めておく案。
犭貪判定はガバガバなので、誰かが犭貪になると数百年ほどは犭貪が出ない。なお実際は単に上手く恐怖が伝わり節制が心掛けられているだけの模様。
「そうだ、それでいい、お前は今、台風だ、地震だ、雷だ、津波だ、傷病だ、事故だ、この世に存在する、抗いようもない不幸の体現だ! 畏れよ!」
そして退治する人間を決める。決まらなかった。犭貪は恐ろしく強いので人間じゃ相手にならねえ。そこで同じく麒麟である炎駒を「木を屠る者」ヒバナとして育てることに。金? 金はちょっと優しすぎるから。この世全てが自分の糧だって言い出すから。
それに犭貪になったからって殺すしかないわけじゃない。
けど、それでも樫名は止められなかった。
決まっていたとしても、自分が求めることを辞められなかった。
彼が転生者であることも手伝って。
青の美しさを望んだこともあって。
なお、これは本当は空のアイツを殺すための機構らしい。