窓枠に詰まった埃を、小さな箒が掃き出していく。
 ちりとりの中に押し留められたその塊が、庭の外に運ばれ、埋められる。
 入れ替わりに、固く絞った雑巾を持つ中世風の人形が、窓枠を丁寧に磨く。その後ろには、水のたっぷり入ったバケツを小さな両手で握りしめた、日本風の人形が控える。
 やがてチリ一つなくなった窓枠に、微笑みを浮かべる彼女。指先をわずかに動かし、人形たちに指示を出す。
 風呂場に向けて行進を始めた人形たちを見送ると、彼女は深くため息をついて、私のほうに向き直った。
 
 「で? なんだったかしら」
 「忘れてんじゃねーよ! 人形繰りを教えてくれって言っただろ!」

 私を迎え入れたときの、美しい微笑みのままに。

 と、は、いえどである。いくら美しかろうが、一挙手一投足が劇の一幕になろうが関係ない。頼むから話は聞いてくれ。聞かないなら聞かないって最初に言え。

 「教えてくれって、言われてもねえ。とりあえず、どんな人形が使いたいの?」
 「……これだよ」