事実化することに慣れてなかっただけだ。
それも非の打ち所がないほどに。
幾千の言葉のナイフで事実を分解して、見え方見つけて遊んでただけ。
そこから事実まで行くために、幾億の証明が必要って知ってて。
それをやりたがらなかった。何でだ。「蓬莱人形」はずっと考え続けてきたのに。
証明のために使える、世界の事実があんまりにも多かったんだ。
一つ一つ対峙して、そのたび真実を書き換えるには、あまりにも多すぎた。
一度にやってくる量が途方もなくて、辞めてしまったんだ。一つずつ見ていけば、それだって同じ方法で解けるはずだろうに。
いいや、「蓬莱人形」はずっと閃きだけで何とかやってきた。
一つのアイデアを突然思いついて、それを通すために変容させていたんだ。
私はずっと同じ方法で解こうとしていた。アイデアが降ることに賭けていたんだ。
それがどうにもならなくなっても、それしかできないと思い込んで。
私はやらなきゃいけないんだ。
一つずつを見る人間に変わる。その先で問題が解けるように計画できる人間に変わる。
そうしなきゃ、社会に何も返せないんだ。