ふねをとめよう
現状有力、氷のレーンに載せ上にぶっ飛ばす。
そして上空で飛び降り、そのまま船だけ着水。

この船クッソ硬いので破壊は不可能。
というかできれば大蝦蟇の池を汚したく無いので、破壊して粒を散らすなどもってのほか
池の上を滑っていくのすら結構負担、というかそんな大きいのかこの池?

千亦自体はもっと前から居たんですが、それが新たな神として認知されてるところに山の情報統制が伺えます。

説明はなるべく短くするように心掛けています。
まあ、本当に短くしたいなら真面目に伏線張ればいいんですが。

 魔法の解説をしましょう。
 船を飛ばした魔法についてです。

「……そう。なら――私達がやる」
「待て、雲居の。これは私のエゴだ。それを優先して、皆を危険に晒す気か? 煙草はなければ山の連中が冬を越せないとか、そんなものじゃない。ただの嗜好品なんだよ」
「でも」

まずは名称ですが、これはただの『水魔法』です。魔力を水に変え、方向を与えて撃ち出す基本的な魔法。それを沢山の魔力でやっただけです。

 基本の五大元素魔法らへんは単純なので、大量の魔力とそれを処理する高速のConversion――もうコアさん居ないし日本語でいいや。変換魔法さえあれば、その分だけ量が増やせます。
 例えるならエネルギーと筋肉、ガソリンとエンジン。一次創作と二次創作者の脳。そんな関係ですね。
 そして高速の変換魔法は前述のとおり、既に持ってます。あとは大量の魔力さえあれば簡単だったのでした。

「――分からないけど、困ってるんでしょ」
「そう、それ。それだけで、命蓮寺が助けるには十分よ」
「……二人とも」
「私も居ます! きっと、大丈夫ですよ!」
「|まはひひひひふふ《まだヒリヒリする》」
「四人とも」

 さて、身に余るほどの魔力を使いたいとき。必要なアイテムは何でしょうか。
 そう、バッテリーです。魔力を貯めておき、必要なときに引き出せるマジックアイテムがあれば、魔力問題は解決します。イメージはまんま魔理沙さんのマジックポーション。あれを作ればいいのです。

 とはいえ、そもそもがどんな魔法にも使える魔力という超不安定物質の貯蓄。まともな方法はどれも時間をかけて安全第一でやってるのでRTA向きじゃありません。
 じゃあどうするかって言ったら、もちろんまともじゃない方法ですね。今回の製法名は『Magical Recycle』です。

「豊夏」

 特定フレームで魔法キャンセルした際、魔法になり切れなかった魔力が一部その場に残ります。それを何かしらの入れ物に入れれば、あっという間にマジックポーション。まともに出た魔力ではないため、ある程度安定しており空気に触れても分解しにくいという副次効果もつきます。今後はガンガンこれを使ってパワープレイをしていく予定でした。過去形です。

「あの、豊夏?」

 ……あ、はい。何でしょうか、一輪さん。ほう、なるほど。大事な話。
 すみません聞いてなかったんでもう一度お願いできますか。ありがとうございます。優しい。え、何で腕を組んでるか? お気になさらず。

「このまま落ちると、私達は煙草畑に着地するわ」

 へえ、妖怪の山って煙草も作ってるんですね。外貨獲得の手段としてポピュラーな商品作物です。大豆やお茶を作ってるのは知ってましたが、こういう趣味嗜好全振りアイテムもあるんですね。今までこんな所に畑なんてなかったのに不思議だなあ。

 ……どなたがお吸いになられてるんです? 趣味嗜好全振り出来る方って、それ即ち強者です。このまま着地して誰の不興を買うかって言ったら、そういった強者です。そんな時、割りを食うのは我々弱者。馬鹿を見たらばガバガバ拍車。

 よし。全力で避けましょう。

「話が早いわね。そうするつもりよ」
「……だが待て。避けるにしても、どうするつもりなんだ? まさか、そこの入道がこの船を掴んで投げられるわけでもないだろ」
「そのまさかよ。……え、雲山、今何て? 『岩を壊すときに相当無茶をした。次の無茶に保証はできん』? ……」

 ……一輪さん? どうしてこちらを見てるんですか? 

 ! ……ああ。よく考えれば当たり前ですね。この船を吹っ飛ばしたのは私なので、着地地点が悪いとなれば責任は私に行きます。それを見越して今のうちにそのミスの精算をさせようという魂胆ですか。なるほど。

 確かに、後で別のことで頑張ったって、前のミスが消えてなくなるわけじゃありません。大事なのは今消すことです。流石一輪さん、一手二手先を見据えている。そのお心遣い感謝致します。

「え。そういうつもりじゃ」
「凄いです! そんなこと、思いもしませんでした……! 勉強になります!」
「確かに、それは今しかできないわね……くぅ、頭が回んなかった。まだ差は埋まらないなあ」
「|はっほひひ《かっこいい》」

 
 これで合理的に指揮権がもらえますよ。
 本当に感謝です。

「え? え?」
「……」
「ちょっ、雲山? どうして頭を撫でてるの?」
「その自信……策があるのか。百瀬の」

 勿論。それでは配置を伝えます。
 一回しか言いませんよ。時間無いし。

 まず――



 ……さて

「豊夏」

 何ですか、船長。

「滝行であなた、私を気遣ったわね」

 いや、変な事情に巻き込まれたくなかったんですが。
 あの修行はもとよりお試しで、ともすれば聖さんに言ってないから悪戯程度のもんです。バレない内に離れるのが賢いやり方ですとも。

「例えそうだとしても、言っておくわ。――ありがとう」

 ……スッキリしたなら、何よりです。
 じゃ、全力でお願いしますよ。

「ええ。……互いにね……!」

 なんかイベントフラグが勝手に立って、勝手に折れたようです。

 というのは走者としてあれなので、一応考察すると滝行時の失敗を一輪さんが説得し切れてなかったみたいですね。いつもは上手く行ってるのに何がいけなかったんでしょうか。
 ……雲山さん、もしかして過保護体質な性格でしょうか。それなら多少一輪さんの性格が変わってもおかしくない。言われてみれば雲なのに一輪と復活タイミングが同じでしたし。
 このチャートじゃどちらも対象に取らないのでさして問題じゃないんですが、懸念事項とチャートにガッツリ書き込みます。もう忘れねえからな。


 

「行くぞ、雲山!」
「応ッ!」

 まず、雲山さんの雲成分をクッション多めにします。

「いっ……けぇ!」

 そして船尾を左手で覆わせ、そこにこころさんがキックを打ち込みます。
 これにより、こころさんのキックの衝撃を船全体に効率よく伝達させ、更に水平に飛ばします。滅茶苦茶? それが通るから妖怪って言うんです。帰ってこれないのでこころさん脱落。

 次に、

「え」

「は」

 ――下から飛んできた天狗と、私が衝突します。

「うぉおおおっ!?」

 だいぶ後退しましたが、背中を修理人が支えているので問題ありません。厄神様を載せてたんだ、これくらいの厄は覚悟の内です。受け止めた知らない天狗と狐はそのへんに放り投げ、さっさと前線に戻りましょう。見た目は電車ごっこですがこちらは大真面目です。

「つっ……無事か、典」
「えぇ。……何とか」
「! だっ、大天狗様!?」

「豊夏っ! 修理人!」

 船長が叫んでますが、ここは負けじと叫んで行動を強制させます。
 狼狽えるな! 船を優先しろ!

「……わかった!」

 次に、水蜜さんがアンカーを刺します。一本は近くの巨木。もう一本を船に刺します。

「今度は、|船《あんた》の強度を信じる……! ふんぬ!」

 二つを繋いでもらいつつ長さを調節し、適当なところで木の方のアンカーを消して船が飛ぶ方向を曲げます。そうだね、グラップリングだね。途中にある枝は一輪さんが拳固『懺悔の殺風』、*265センチの魔人現る!*などで一掃します。
 雲山さんは片腕をおいてきたので本気が出せません。そこで怪ラストワード。これが工事に使われる風景はここだけでしょう。

「通しません! 叫喚『プライマルスクリーム』!」

 右では響子ちゃんが反射させ密度を高めた弾で枝を焼き尽くしています。分かってて配置しといてなんですが、皆強い……強くない? これと後でやり合う私の立場も考えてほしいですよ、全く。

 さて、目算が正しければこれで……

「……届いた!」

 届きました、《《大蝦蟇の池》》。
 
 今までの道のりで、この川が馬鹿みたいに危険なのはわかりました。それならいきなりクリアまで持っていっても問題ありません。危険なので強制的に終了した、が通じます。
 それでももっと良い方法があっただろって着地だと言われるんですが、大蝦蟇の池に着水すればもう文句は出ません。通常通りイベントが発生し船は止まります。

 止まるんですが、それでも私はやらなきゃいけない事があるんですよね。水平方向、少し上向き。
 再度Recycle水魔法を放ち、船の勢いを弱めます。

「! 始まったか……!」

 その勢いを止めるために、背中を支えてもらう必要がありました。一人じゃ甲板に叩きつけられて真上を向き船を沈めるだけです。

「む……ぅううん!!」

加えて前方から、雲山さんの右腕一本張り手。

「投錨ぉぉぉぉーーーっっ!!!」

更に船の左右からアンカーを出してもらい、船を止めます。
こんなに出して大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、水蜜さんのアンカーは平常でも二十本余裕で出せるので平気平気。大蝦蟇の池の自然? まあ、ちょっとは死にますが。それくらいは最終地点として指定された時点でこの池も承知の上ですので。

さあ、ここまでやったんです。船は当然止まりますね。

「止まれ……」
「止まれ!」
「止まっ……れぇ!」
「止まりなさい!」
「止まらんかぁ!!」



「え……何、これ。何事?」
「典。下がってなさい」

 話は上がってきている。こちらに衝突してきた、あの最前列のブロンドの人間。奴が山の侵入者とやらだろう。襲われた三人は、特に目立った外傷なく突破されてしまったのだという。

 三人の事は、それなりに知っている。真面目に修行し、めきめきと実力を付けている若手の星だ。彼女たちが先陣を切る姿は、他の天狗達が負けていられないと修行を始める切っ掛けになっている。

 それを突破した。
 誰も傷つけない、そんな手加減をされてまで。
 侵入者が手練なのか、あるいは……
 

「大天狗様……?」

 ……その想像が正しければ、

全てを解除すれば、責任は免れない。
慕ってくれる部下達がいる。典も居る。今、大天狗を失職するわけにはいかない。
だから、これだけ。

「大天狗、飯綱丸龍の名において命ずる。一度だけ、《《禁止を解いて》》いい」
「!」

 思い返したのは、契約のとき。
 

「良い顔になったじゃないか、赤河童」

 より正確に言うなら、それどころじゃなかった。
 復讐は、生きていなければ達成できない。
 必然的に、死にそうな今のこの状況は、生きるのに精一杯で復讐なんて考える暇はなかった。

 ただ、彼女は空を飛べる妖怪でもある。
 本当に復讐のことだけ考えるなら、下船はいつでも出来た。
 それをしないという事を、龍は好意的に捉えていたのだった。



「……そんな……」
「止まら、ない!」

……なぁんてなぁ! 止まるわきゃねーだろぉがよぉおおん!!?
だって、まだあの方が来てない! 船が止まるイベントが起きてないんですからねえええ!!

ぴょこん

「……大蝦蟇様!?」

そして……無言の張り手!

「ぬっ!?」

これで止まります!
止まります……
止ま……

「……そんな……」
「止まら、ない!」

さっき見た。

「やばい! 崖よ!」

……ウッソだろお前! 何でまだ足りてないんです? 川か!? 厄か!? そりゃ普段と違う要素が二つもあったらこうなるか!
けど! 幾ら何でも、厄が過ぎる! というか止まるイベントで止まらないのはバグじゃないですかね? もう人員も、策謀もありません! この船はもうだめだ! 脱出を……

……出来ない! 

『山童部隊! 誘導完了! あとは頼みますよ、にとりっ!』

拡声器を構え

「そこ前二人! どきな! 船員は機を見て降りろ!」

にとりさん!?

「危険だってことは分かったんだ」

「だったら、ケツ拭くくれえは|河童《ウチ》がやんねえとなぁ!!」

でかい水の……壁!?
そんなんで何ができるんです!?

「今だ!」

にとりの後ろから、その不自然な冷気が顔を出す。

「終わったらカゴいっぱいのお菓子だかんね!」
「『認識禁止』……解除!」

「行けぇぇぇチルノォォォォ!!!」
「『不純物溶解禁止』!!」
「ひっさつ!」

「マジフリーーーズッッッ!!!」

反比例の曲線型……上向きの……氷のレーン。
勢いを……上に……逃したようです。

ああ……良かったですねえ。もう少し勢いがついてたら、天界に突っ込んで領土侵犯扱いでしたよ。普段は不遜で矮小なる地上人が何やろうが構わんみたいな態度ですが、流石に船で突っ込んできたら団結して破壊しにかかりますから……住吉ロケットに関してはイベント『神なる土地でのサンカク関係』を……

……さて。宣伝も済んだところで、冷静に状況を見回します。

「……さすがに……」
「二度目は……」
「ないよ!」

 大丈夫みたいですね。二度目の方々は問題なく船室に引っ掛かってます。

「はは……あぁ……本当に。生きてる心地がしない……!」
「典……大丈夫だ。落ち着いて、呼吸を整えろ……」

 あの知らない二人組も無事のようです。天狗はともかく、狐が付いてこれたのは驚きですね。尻尾は一本で、普通の妖獣っぽいんですが。やっぱ天狗の下に付くだけはあるってことなんでしょうか。
 となると全員、無事なんですね。良かったあ。

「そうだな。お前を除けば」

 ……全員、無事なんですね。

 いや、まあそりゃ私だって目が見えないわけじゃないんですよ。逝っちゃった右腕をさらに酷使して、何かプラプラしてるのは見えてます。さっきまでは常に腕を組むことで誤魔化してましたけどもう無理です。

 回復魔法? 当然の様にコスト馬鹿高です。

船上
水蜜、一輪、雲山片手、響子、私、(大天狗、菅牧典)、修理人

船外
大蝦蟇、チルノ、河童

上に船を飛ばし、勢いを失ったところで脱出
落ちてきたところを大蝦蟇様が止めてフィニッシュ
着水する船をバックにチルノと握手

私が撃ち放ち、船加速
蹴りで上へ?

「この船は止まらない」
「……それなら、止めなくていい。ただ、最後まで続く道を用意する」
「真っ直ぐ……飛べ!」

イチ、大蝦蟇様が止める
ニ、にとりたちが止める
サン、パーフェクトフリーズ
ヨン、聖

必要
船を加速させる
船の方向を変える
船を止める
船を上に飛ばす
船を完全に止める

加速:こころ
方向:水蜜
止める:大蝦蟇、雲山
上:チルノ、河童
完全:大蝦蟇 

一輪、響子、修理人、私

こころを落とすと

「詳細は聞いてないが……大蝦蟇の池に辿り着けば、必ずこの船は止まる。
 ならば我々が成すべき事は一つだ。川の調査はもう十分。危険だということが分かったから、それでいい」

フランドールさんの質は「破壊」「狂気」「テクニック」です。
大概ヤバそうですが、使わなければヘーキヘーキ。

分からない物専用のナンバーを用意する手もありますが、それよりかは一番目を返したほうが素早く処理できます。手慣れた扱いをしてやればいいだけなので。