「あああああああああ!!!」
なすすべもなく縦穴を落ちていく。ドレミーが意外と距離を稼いでくれたおかげで激突までは時間があるものの、それでももって十秒だ。この間で助かる妙手を打てと。アイテムも無しに。
しかし天邪鬼、ここで乾坤一擲の手を思いつく。思えば十日間の時もそうだった。ギリギリの時ほど頭は冴えるものだ。私は手を地面に向けて重力を反転させた……あ、簀巻きだから手が出せないわ。
「うわあああああ!」
ちなみにドレミーは一緒に落ちている。おい、あの時の余裕はなんだったんだ。返せよ私のシリアス。それと余命。
……ん?
「おい、ドレミー!空飛べよ!」
「ああああああああ!」
あ、聞いちゃいねーなこれ。いよいよもってどうしようもないパターンじゃん。いかに妖怪といえど、ざっと500m上から落ちたら死にかける。人の形を取った以上はそうなる。やべえどうしよう。こうなりゃあれだ。ぶつかる瞬間ドレミーをクッションにするように落ちるしかないな。
そう思ったものの、現在位置はドレミーの下。抱えられた状態で頭から落ちられたらそうなるよね。よし、お祈りを始めよう。ああでもここで神に祈っても効果薄そうだ。ならば奇跡待ちで行こう。たまたま下を通った人が物凄く頑丈で、クッションになりそうなぐらい柔らかい人である感じの奇跡よ起これ!起これよ!何も起きないとか泣くぞ!拗ねるぞコラァ!
そう思いながら私は目をつむった。
「全くもう。私が迎えに行かなかったらどうするつもりだったの?」
ぷんすかぷんすか。今ならそんな擬音が聞こえてきそう。
地面と激突寸前、私たちは突然青い手に包み込まれた。一瞬あの現実改変自己中女ラノベを読みすぎたのかと心配したが、大丈夫です、現実ですよ。というか古明地こいしだった。女しかいないからレズチューしかないなとかそんな心配もいらなかった。そしてそのままバスケ会場に連れていかれる途中である。
「というかドレミーちゃんは飛べるよね?なんで地面とフュージョンしようとしてるのさ、もう。」
「……申し訳ない。夢の中以外は慣れなくて。」
いや、絶対嘘だろ。テンパってただけだろ。そうじゃなきゃあんな身軽に跳べるものか。
「正邪ちゃん。賞品が逃げちゃ困るよ」
やだ、この子怖い。妖怪とかじゃなく普通に怖い。
「もー、一回戦実況なしになるところだったよ。どうしてくれるのさ。」
「……それより、何故黙っていたのだ、貴様。私が聞いたのはこいつを痛い目に遭わせるのに協力しろ、のはずだが。」
「おおっと、聞き捨てならない単語が」
私は手を鳴ら……せねぇ。
「あはは、正邪ちゃん。敵のいうことを信用してはいけないぜ」
「いや、こいつもお前も同レベルだから。知らずの内に体を縛る奴は信用出来ないから」
「むぅ」
こいしは考え込んだ。ように見えても何も考えてませんでした、とか平気でやるタイプだ。私はドレミーに目配せした。もっかい抱えて逃げろ。
「早く答えろ。」
ああ、うん。見てないな。もう自分の