「その人は『自分は紅魔の知り合いだ』と喧伝してましたが」
 「潰す」
 「手のひら軽すぎない?」
 「紅魔館の一員ならば、主以外に異変を起こす者は許しません」
 「……」
 包帯を巻き終え一人に戻ったフランドールが目を逸らす。落ち着け、異変はまだ一度も起こしてない。今までの仕事は全部ただの異常だ。

「パワーバランスは等しくあるべきです」
 みとりが持っていたペンで宙に絵を書く。さらさらと描かれていくそれは……幻想郷の地図か?
 お前、黒幕やるなら絵心つけてこいよ。近くで見た点描画みてーな絵描きやがって。フランドールなんて頭に『?』浮かんで……違う、アホ毛か。
 「特に、紅魔館に集まられると、私達としては非常に都合が悪い。せっかくみなさん大きな家をお持ちなのですし、一日ごとに切り替えるのはどうですか」
 「それを言うために……全員倒したというのかしら?だとしたら、見当違いもいいところよ。」
 うん、もっと言ってやれ。

香香背男を身に宿す少女。いや、本来香香背男がメインのはずなのだが。
 天津甕星は本来天津神だが、性格が天邪鬼だったので国津神について反逆した。けど建葉槌命に星ごと封印される。ここまで神話。
 しかしギリギリで分霊を作り封印を逃れ、足りない力をサグメの羽で補い、天津神たちに突貫した。でも敗北する。星の神なのに星が封印された状態じゃちょっと。そして地球に叩きつけられる。
 ……はずだったが、せめてもの反逆として落ちる場所を地から天に逆転。月に着地した。ここで天津甕星は力尽き、しばらく休眠へ。意識を自我を持ち始めていた羽に譲り渡す。TS。

 そして月でサグメと会ったりドレミーにキレられたり純狐に純粋に殺されかけたりといろいろな目に遭う。やがて三つ足のカラスの伝令で彼女を発見、総出で殺されかける。
 
 その時にサグメに願われた少女。『そうだ、それでいい。逃げろ、逃げろ、どこまでも遠くに。私は願おう、お前の未来が、限りのない幸福に満たされることを。さようなら、……私の娘。』
 という何気のない別れのセリフのせいで幻想郷中から狙われるようになってしまうという。まあ、本人にとっては幸福みたいですし、いいんじゃないですかね。

彼女は幻想郷の生まれではない。魔界でも、夢幻世界でもない。外の世界から流入した都市伝説、『|秘密結社<<イルミナティ>>』である。
 しかし幻想郷では秘密結社は元になる妖怪が多いし、草の根妖怪ネットワークという先駆者がいるしで、噂があまり盛り上がらずに消えていくはずだった。
 ところが賢いのが秘密結社。輝針異変の時にあった付喪神が依代を交換する秘術、それを応用し都市伝説をやめて消滅を防ごうとした。
 早速依代を探すが、どうしても合う依代が見つからない。そりゃそうだ。都市伝説は付喪神のように、古びた物や歴史がある物と繋がりがあるわけではない。
 むしろ歴史が浅く、現代に即したもののほうが体に馴染む。でもそんな物は幻想郷には存在しない。
 諦めかけたその時だったのだ。
 空からカナの落とした標識が降ってきたのは。
 その瞬間、彼女の夢は現実となった。

「あぁそうだな!無茶苦茶で横暴で手前勝手で傲慢だ!」