up:: 蓬莱人形フランドール説第一稿第二話
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ボクらはすっかりこの場所での生活にも慣れ、気ままな暮らしを始めていた。
廃洋館は見た目こそ古ぼけていたものの、生活用品はそっくり残っている。服は着れるし、カップでコーヒーも飲める。毎朝干せば、ちゃんとふかふかのベッドで眠ることも夢じゃなかった。
森の恵みは、ボクら八人をお腹いっぱいになるまで癒やしてくれる。木の実は豊富で、茸も生えている。廃洋館の近くには、これもまたサグリが見つけた湖があるから、水の心配はない。魚だっているし、少し水源を辿れば沢蟹だって取れた。自由な生活はまるで楽園にいるようだった。
けれどただ一つ、できない事があった。森から出ることだ。
「今日こそ、外を見つけに行くよ」
七日目の夜明け前。眠れずに洋館の広間を彷徨いていたボクに、サグリはそう言った。
上流へ向かうんだ。まずは山から全体を見下ろす。明かりが見えたら一番いいね。他にも面白いものがあったら、沢山覚えておくよ。帰ってきたらいっぱい話してあげる。
サグリの背には大きな背嚢があった。よく見ればそこにはいくつか見慣れない装飾品がついていた。気になって見ているとサグリが話し始める。この遠出を控えて、一人一人に相談と挨拶をしていったときに貰ったのだという。日本ではこんな風に遠出する人に願いを込めて物を渡す風習があるらしい。
いつの間にそこまで染まったのだろうと思いながら、ボクはポケットを漁った。小さな翡翠の装飾品が出てきた。たぶん実家にあったものだろう、ボクはサグリから紐を借り、懐からナイフを取り出して適当な長さに切った。それを装飾品に引っ掛け、背嚢の紐に結びつける。サグリは一瞬目を丸くした後、くしゃくしゃの笑顔で礼を言った。
それじゃあ、行ってきます。そう言って、サグリが玄関を開ける。そして振り返らず、彼は門を出ていった。草を踏み、森へ入り、足音が消えるまで、ボクは手を振り続けた。そうして一切の痕跡が消えてから、ボクはドアノブに手をかけた。
だから、聞こえるはずが無かったのだ。
なのに、ボクには確かに、
『骨が折れた音』が聞こえた。
あるけ、インの方で走るから
いつもなら気にも留めない。この場所に来てから、何度か狩りを見た。その時に聞こえた音が耳にこびりついて、幻聴でも起こしたか。あるいはメイが森に罠をかけていて、捕まった動物が哀れ一撃で絶命したか。どちらにせよ、ボクが気にかける事じゃない。
けれどボクはその日、既に歩き出していた。その音はサグリの向かった方角から聞こえてきた。ただそれだけで、ボクは気になってしまったのだ。森の向こうで何が起きたのか。その向こうに何があるのか。昔サグリが言っていた、『好奇心に突き動かされる』なんて現象が本当にあるとするなら、このボクの今の衝動を指すのだろうか。どこか他人事に、ボクはそう考えていた。
歩く。歩く。
木の根で足場が悪い場所だ。ボクは何度も足を取られ、強かに体を打ち付ける。それでも足を止める気にはなれなかった。そこかしこが擦り傷だらけになっても、ぜえぜえと息を切らしても、音の方向へ進む。
ここがないと、好奇心殺害〜弾幕勝負の隙間がなさ過ぎて、元気満々の妖怪と出会う。それでも他に獲物を譲る予定ならムシられそうだけど。
それ以上に展開的に急展開が多すぎ。
跳ぶ。跳ぶ。
複雑に入り組んだ場所は跳び越える。やがて川の向こうに人影が見えてきた。サグリの身体能力にしてはまだ近い所にいる。それでも、それはサグリのはずだった。翡翠の装飾が背嚢の影から覗いていた。
さぐ、
それは、水だった。
朱色に染まった水粒が、ボクの全身を叩く。
その水は、川向こうに置かれた奇妙な噴水から噴き出していた。
噴水を支える二本の棒。薄いながらも、固く引き締まった本体。そこに引っかかった背嚢。その左右からぶら下がる棒は、先が五つに別れている。
水は、川の水よりもぬめっていて、気をつけないと転んでしまいそうだった。
水は、本体の上から勢い良く出て、朝焼け空を朱に塗り替えていた。
水は、鉄の匂いがした。
これは、血なんかじゃ、ないはずだ。
嘘では?
もっと冷静に記述してもいいのでは?
どれだけ経ったのだろう。視界が明滅する。身体が震える。半刻にも、半日にも思えるほどの間、ボクはただそれを眺めていた。不思議と考えが纏まらなかった。やがて湖の方から物音が聞こえ始めたので、ボクは幽鬼のようにゆらゆら揺れながらそっちへ向かった。反射的な興味だった。
湖の上には、見た事も無い雨が降っていた。大小様々の光り輝く玉が、方向も自由に飛び交っている。よく見れば玉だけではない、針のように細い粒もあれば、紙切れのようなものも飛んでいる。その雨の中心に誰かが居る。
白の小袖に、赤の袴。赤い帽子を被り直して、また雨の中を飛んでいく。服は脇が開いていて、帽子には星型の飾りがついていた。彼女は雨の中の誰かと戦っているようだった。小袖が朱く濡れていた。
誰かは複数人いた。彼女は雨を巧みに操り、次々と叩き落としていく。落ちていく誰かには集中的に雨が降り、後には焼け跡だけが残った。すぐに最後の一人だけが残った。
雨は激しさを増していく。みるみるうちに恐ろしい嵐となったそれは、雨の中の二人を光で覆い隠した。やがて一方が嵐の下に落ちていった。少しずつ止み始めた嵐を貫いて、もう一方も湖の向こうへ消えていく。ボクは初めに落ちたほうへ駆け寄った。誰かが岩に凭れていた。
「……あなた、は」
それはさっきの帽子の子だった。ひどい有様でもそれは分かる。内臓まで切られた腹は言うに及ばず、俯いた顔には深々と傷が刻まれ、削がれた頬から白い歯を覗かせている。力なく垂れた右袖には厚みが無く、代わりにどくどくと溢れる血が池を作っていた。ボクは何が起きているのかと聞いた。
「妖怪……退治、よ。人間を害した妖怪は……私が、巫女が退治しなきゃいけないの。それが規律」
彼女はふらふらになりながらも体を起こそうとしていた。ボクが手を貸すと一瞬躊躇ってから借りて立ち上がる。けれどすぐにまた膝をつく。
「けど……私、もう駄目みたいね。あーあ……まだ残ってるのに」
彼女が最後に落ちていった誰かを睨んでいる。そこにいたのは少女だった。白いシャツの上から黒い上着を着て、長い金の髪を振り乱し倒れている。あれが妖怪なのだろう。
「……ねえ。あなた、この後暇?」
暇かどうかというと、確かに暇だった。生活は満ち足りている。仕事についても、サグリが誰かの手にかかって死んだことを伝える。それくらいだ。少し遅くなっても、問題ない。
「そう。……じゃあ、後は頼んだわ」
彼女がそう呟く。
不意に、世界が揺れた。
じわじわと頭の中心に熱が集まる感じがする。痛みが反響しているみたいに大きくなっていく。呼吸は酷く荒くなり、自分の鼓動の音だけが耳鳴りのように煩く響いている。ここを離れようとボクはただ脚を動かした。けれど動かない。
暗くなっていく視界には、彼女の左腕がボクの腕を握り潰さんとばかりに強く掴んでいるのが映っている。触れられている場所はまるで五寸釘の筵を巻かれたような感触で、この体調を生み出している原因だと考えるには十分だったんだ。引き剥がすためにボクはその腕を力の限り蹴った。見たこともない方向に曲がった腕は、それでも握るのをやめなかった。痛みが増していく。目が熱い。
「――――ごめんね」
帽子の子は、そう呟いたのだろうか。目も耳も馬鹿になった今のボクには、その意味を受け取っても疑わしいままだった。
釘が解ける。少しだけマシになった体調が、ボクの行動を許して《《やっている》》ように思えた。さふ、という音でようやく彼女が倒れたことに気がつく。うつ伏せに倒れた彼女の首にボクは指をやった。何の振動も感じられなかった。よろめきながら立ち上がり、倒れないように一歩踏み出す。
途端、つま先から頭まで大きな針が貫いたようだったんだ。そこに縫い留められたような錯覚を起こして、ボクはしばらく動けなくなった。代わりに思考が回る。
もう帰ろう。体が痛い。まっすぐ歩くこともこなせない。何なら、ここで少し休んでいけばいい。朝靄がかったこの湖の空気が、熱った身体を癒やしている。ボクはそれに従いたかった。ここで寝転んでしまえば、ざっと十六時間程は泥のように眠りこけられる。そんなことはどうでもいい。ともすれば今日の出来事はすべて夢かもしれない。思えば昨日の夜からボクは眠っていないのだ、今倒れても不思議じゃない。十分に休んで、それからまたいつもの気楽な生活に戻ればいい。戻れれば、それだけで良かった。
けれど――ボクは、その一切を無視した。
「……ああ」
生まれ変わったような気分だった。体中の痛みを、昂揚感が上回る。体はどこまでも軽く、空を飛んでいけるようにさえ思えた。ボクは妖怪の方へ向かった。妖怪は力の限り首を回し、ボクを見ていた。
「……」
妖怪はボクを見て口を開いたが、そこから言葉は出てこない。代わりにがぶがぶと泡立った血が流れてくるだけだった。よく見れば、彼女の着物は所々が赤かった。その血は喉からだけでなく、彼女の体中からも湧き出していた。彼女の肢体は紫に染まった場所もあれば、針に埋め尽くされ血が細く筋を描いている場所もある。血は徐々に地面を埋めていっていた。幣を引きずる。懐からナイフを取り出す。一歩、一歩と近づいていく。
「――」
彼女の口から小さく、その泡の隙間を縫うようにして、吐息と聞き紛うほどに小さい声が漏れる。辺りの空気が変わったのを感じた。肌が内側から抉られているような感触だ。それでも、ボクが足を止める理由にはならない。ナイフを突き立てる。横一文字に引く。瞬く間に、ボクの服が細長い布になっていく。
「……!?」
即席で作ったそれを丸めながら、ボクは彼女の隣に座った。うつぶせになっている状態では、傷の詳細は分からない。一切の躊躇なく、彼女を横向きにして服を切り裂き、傷を診る。
「……ぁ…」
「これで生きてるなんて、妖怪はおかしいね」
丸め終わったものを彼女の傍に置き、ボクは湖の方へと歩みを進めた。水を帽子に汲み上げ、一番大きな傷にかけ流す。細かな汚れが落ちたのを見て、さっき作った包帯を巻いた。包帯はすぐに赤く染まっていった。ボクはより強く縛った。
「……」
「メイの治療、効いてるのかな。なあ君、どうなんだい?」
次の傷に取り掛かろうと水を手に取ろうとすると、妖怪がボクの手を握った。そのままギリギリと力のまま、手を持っていかれる。ついたのは針が刺し並べられている傷だった。ボクの指がその針に触れるように、彼女は手を引いているようだ。
「――」
「わかった」
ボクは一息に針を掴み、そして一斉に引き抜いた。彼女の顔が歪む。抜けた穴からは血が細く流れていた。量は妙に少ないようだった。そのまますべて抜き切って、すぐさま水をかけ包帯を巻く。
「……」
「足りないな。塞げる傷はあと二つ三つだ。ボクの服は……これ以上は、帽子の子の血が混じる」
さっきあの子に肩を貸したときだ。ボクの服は、かなりの範囲が血で汚れていた。怪我したときは清潔にする。昔逃げ遅れて大怪我を負ったメイが、譫言のように唱えていたのを思い出す。もうここに、清潔な布は残っていない。
「……おい」
「仕方ない、いったん帰るよ。それじゃあ君、ボクが戻るまで生きてくれ」
「おい」
土を払って立ち上がるボクを、呼び止める声があった。見れば、妖怪が上体を起こしながらこちらを見ている。息は絶え絶えながらもその声は芯があり、とてもさっきまで重傷で倒れていたとは思えない。泡のような音もいつの間にか消えていた。
「驚いたな。もう治ったのか」
「……何で助けた」
睨む彼女の眼光は鋭く、僕をまっすぐ射抜いている。ほんの少しだけ顰められた眉は、それが詰問ではなく疑問であることを告げていた。倒れてたから、と前置きして話を続ける。
「倒れてたら、治すものだろ」
「私は妖怪だぞ。巫女から聞いてないのか」
「そうだね。人を害したらしい妖怪だ」
「なら」
「尚更だよ。死なれたら、ボクが退治できないじゃないか」
何気ないその言葉に、妖怪は目を見開いた。退治が何かは知っている。跡形も無く消し潰すことだ。そして帽子の子は、生きた妖怪だけを退治していた。だからボクもそうする。それだけだった。
「……気狂いだったのか。つくづく運が無いな……でも、助かった。ありがとう」
「どういたしまして」
ボクは手を横に広げて頭を下げた。いつもの仕草にしては布が足りず、手が空を掴む。そのお辞儀を見た妖怪は目を閉じ、顎に手をやって唸っていた。
「……そうだな。それで帰られて私の評判が落ちるのは癪だ。私もこれじゃ襲えないし……」
そう言って妖怪は立ち上がった。彼女の服はそこら中が血で黒く固まり、もう殆ど肌すらも見えない。ボクが切り裂いた部分も段々と黒に染まっていっているようだった。
「ちょっと待ってて、服取ってくるから」
行き戻り
「……お前、今どこに住んでるっけ」
「……今はこれで」
体に付いた闇の分け与え
「光を通さない、音も通さない、断熱性もばっちりの特製だ。ただし今の季節は蒸れる。あと可愛くない」
感謝
「気にするな。これは最低限だ、長く保たない。……だから礼にならんのだよなあ。お前、何かやりたいことはあるか?」
「君の退治」
「それ以外で」
「弾の撃ち方」
「それはそれ以外じゃない。というか、それ基本だぞ。よく私を退治しようとしたな」
「なら質問権をくれ。どうして退治されたら困るんだい?」
「消えたら何もできないからだ」
「それなら、どうして君は『ボクに退治されるつもりがなかった』んだい?」
「……聞こえてたのか」
「目と耳はいい方なんだ。昔の杵柄だよ」
ため息
「妖怪にとって、博麗の巫女は災害みたいな物なのだ。人間を襲うと、急に動き出す災害だ。隠蔽が完璧だったとしても運が悪ければ消される」
「けどお前、巫女の退治を見てたんなら分かるだろ。綺麗だったよな、あれ。あれは同胞が消されてる姿だ、そんなの思うだけでも侮辱だって、そう思う気持ちも当然あった。でもな、それ以上に私は美しいと思った。巫女の手にかかって消えるのなら、それも悪くないって具合にさ。恋しちゃったんだよ、巫女の退治に」
「だから私は、お前に退治されるつもりはなかったんだ。どうせ死ぬなら、あの美しさの一つになりたかった。それを作ってんのは歴代の巫女だ。お前じゃない」
「……分かったか? 分かったんなら、退治は辞めろ。失血死はちょっと不満だったし、助けてくれたのは感謝してる。だから私は今お前を殺すわけじゃない。でもお前が私を退治するって言うなら、私はお前を殺すよ。手加減なんて一切ナシだ。それは、お前の望むことじゃないだろ」
眼の前に死があるからって、レンが日和る気がまるでない。紫誘いは紫が退治されるわけじゃなかったんでよかった。
コロシアイと退治の美しさがセットになってるせいで、巫女から頼まれた退治を何がなんでもしようとするこのレンだとすぐルーミアのカウンターキル入って死ぬ。
まずコロシアイと退治の美しさの繋がり解かなきゃいけないんだけど、どう話持ってけばいいんだ。レンの頭は退治しかねえんでコロシアイになるなら一も二もなく殺すよ。紫は育成疲れてたから殺し合いを拒否してた。ルーミアも殺し合いを拒否る理由があれば良いんだけど、それ=退治の拒否で、レンはそれが通る相手にはとても見えないというのが問題。
レンはその間にあるスキルが存在しないときどうするんだ? 誰かから学ぼうとする。巫女がいない今ルーミアしかそのスキル、今回は弾の撃ち方を教えてくれるやついないけど。流石にこれと退治を結び付けられないほど馬鹿じゃないって考えてたら、このあとスキの狙い方とか教えちゃうアホがいることに気がつく。あれ? やっぱこのルート破綻してね? しかしですね元のルートだとかげろーの程々の退治ってのができねぇんです。ネギ科叩き込めばある程度行けるけどそれ殺しちゃうのでは……? 弱くていい! 弱くていいんだ妖怪は!
「なら、弾の撃ち方を教えてくれ」
「本当にそれはそれ以外なのか?」
「
「それで、いつ退治する気なのだ」
「今」
「やりたいんだけどね。君、あの光る玉の出し方を知らないかい?」
「……お前……基本もできないのに、私を退治するって言ったのか」
立ち上がる
「頼まれたからね。それで、どうやって撃つんだい」
あの巫女が見誤るとも思えない……
でもここで何もしないと宵闇の名折れ……
そもそも教えていいのかこいつに……
目を閉じて考え込む
「のわっ!」
「用事だ、すぐ終わる。覗くなよ。というか動くな」
「
一旦塒に帰らなきゃいけないのか……
「こうだ」
闇服
「これは?」
「私の能力で作った暗幕だ。光を通さない、音も通さない、断熱性もばっちり。お前をあの姿で返せば私の沽券に関わるからな。特別だ」
「ありがとう。それで」
「それで、何だ。今見せてやっただろ。あんな感じで」
ただし今の季節は蒸れる。あと可愛くない」
立ち上がる
全部見てた文、死ネタなので扱わないけど他のブンヤにネタを持ってかれないように監視
「 いいのかい」
「困ってたのは針だけだ。あれがあるとまともに再生できなくなるからな。安心しろ、しばらくは取って食ったりしないよ」
「残念だ。退治しようと思ったのに」
「威勢がいいな? まあいいけど」
こっちをじろしろ、スカートとか
「そうだな。まず、それで帰られて私の評判が落ちるのは癪だ。ちょっと待ってて、服取ってくるから」
行き戻り
「……お前、今どこに住んでるっけ」
「……今はこれで」
「光を通さない、音も通さない、断熱性もばっちりの特製だ。ただし今の季節は蒸れる。あと可愛くない」
感謝
「気にするな、これは最低限だ。……だから礼にならんのだよなあ」
「お前、何かやりたいことはあるか?」
「君の退治」
「それに私が協力すると思うか?」
「? やりたいことを言っただけだよ。協力してくれるのかい」
「……こんなのどうやって制御してたのだ」
「
頭の回る聖妖怪で仕事に忠実でどうせ死ぬなら華々しく死にたい。
「……退治、退治というが。やり方分かってるのかお前」
「光の玉とか、紙とか、針とか、棒で消えるまで殴る」
知りたいことなら
「知りたい? そういうのは苦手だけど……まあ言ってみろ」
退治されるつもりないって
「僕を見て呟いた言葉さ。お前に退治される気はないって、あれはどういう意味なんだい?」
「聞こえてたのか。単純だ、私は宵闇の妖怪。瀕死だろうと、ただ託されただけの偽巫女にはやられんよ」
偽物に引っかかりながら、宵闇
「……特に恐れてないな? 外の世界は、闇の怖さも忘れたって言うのか。嘆かわしい」
「誰も?」
「そこまでは言ってない」
流石にごっそり持ってったらバレるので、札一枚だけすり撮れ
「……失せろ」
彼女の口から小さく、吐息と聞き紛うほどに小さい声が漏れる。辺りの空気が変わったのを感じた。肌が内側から抉られているような感触だ。それでも、ボクが足を止める理由にはならない。幣を引きずる。ナイフを取り出す。一歩、一歩と近づいていく。
「お前に、退治される気はない……!」
自分服切り裂き
「……??」
「……!」
傷手当、去る
「待て……」
致命傷のはずなのに
「それはひょっとして、ボクに言ったのかい」
「お前以外に……誰が居るんだよ。どうして、治した?」
「倒れてたから。倒れてたら、治すものだろ」
「……私は妖怪だぞ。巫女から聞いてないのか」
「そうだね。それに、サグリを殺した相手だ」
「! ……なら、なんで」
「言ってるじゃないか。倒れてたからだ」
「……!」
傷手当、去る
「待て……」
致命傷のはずなのに
「肺を……優先して、治した。これくらい、造作もないのだ」
「それより、なんで治療した」
人が倒れてたら治す
「……私は妖怪だぞ。巫女から聞いてないのか」
でも治す
「……気狂いだったのか。本当、運が無いな……でも、助かった。ありがとう」
立ち上がる、治るの早いね
「正直、困ってたのは針だけだ。まともに再生できなくなるから。安心しろ、しばらくは取って食ったりしないよ」
残念だ、反撃しようと思ったのに
「威勢がいいな? まあいいけど」
「そうだな。まず、それで帰られて私の評判が落ちるのは癪だ。ちょっと待ってて、服取ってくるから」
行き戻り
「……お前、今どこに住んでるっけ」
「……今はこれで」
「光を通さない、音も通さない、断熱性もばっちりの特製だ。ただし今の季節は蒸れる。あと可愛くない」
感謝
「気にするな、これは最低限だ。……だから礼にならないのだよなあ」
「お前、何かやりたいことはあるか?」
知りたいことなら
「知りたい? そういうのは苦手だけど……まあ言ってみろ」
退治されるつもりないって
「ああ、さっきのか。当然だ、私は宵闇の妖怪。ただ託されただけの偽巫女にやられてたまるか」
偽物に引っかかりながら、宵闇
「……特に恐れてないな? 外の世界は、闇の怖さも忘れたって言うのか。嘆かわしい」
宵闇妖怪
紫に食べていい人類がいると言われて来た妖怪。八人居て二、三人食べてほしいと聞いて油断せず一人ずつ襲うくらいには賢い。が、紫の裏目的、紅魔館からの偵察を「歓迎」するというのには気づいてない。まあ普通分からんよ。
というか一人食べた瞬間巫女が来たので、すわ紫が自分を殺すための罠を張ったのかと疑ったレベル。実際は偶然だし、こいつもそれが薄々分かってるから普通に連絡したが。巫女は交通事故はこの頃からの共通認識。振り向くな、生き抜くためなら倒しきれがスローガン。
なお、巫女が気づくのが早すぎたのは紫にとっても想定外。次代の教育を急いでるせいでめちゃくちゃ焦ってる。
食べていい人類の話が出たのは一週間の中ほど。野暮用で外出てたら別荘が占拠されてた。怒ってもいいポイントだが正直紫の自分が断らないようにする舞台づくりだろうなっていう気が結構してるのでもう怒らない。
他に貰った情報は聡明な奴のこと。こいつを殺すために前二人は肉になってもらった。妖力を貯めて屋敷全部を宵闇で潰し聡明から食う作戦。
こんな物分かり良いし賢くもある奴が美食家? 盛りすぎでは?
でも退治ごっこの糸口が見つかりそうだったゆかりと違って、宵闇には特に美しいを連れ歩く理由が無い。その目的が退治とわかってたら尚更。なんとか目的を明かさずに付いていこうにも、妖怪を人間()が治してたら普通なんでって聞くんだよなあ。聞かないならもう会話すらせずに帰ってくだろうし。ただしルーミアはそこそこ誇り高いからお礼はする。
退治なんて出来ないと侮るわけもない。だって巫女にやられた後だぞ。また油断してるんだったらそいつもうどうしようもないストレッサーだしそんなん見たくないのだ。
生に絶望してる? そこから美に生を見出す的な? つまり狂人では? ただあれだ、聖者は十字架云々の話してるし自分を聖者と思っている狂人かも知れない。いや大事な幻想郷の外への宣伝にこんなん送らない、絶対送らない……吸血鬼関連を見抜いてるなら、こういう聖者もいるよって紹介するかもしれない。
聖者として先輩の巫女には殺されたいけどお前は駄目。でも助けてくれた事には感謝する。うーんめんどい。というかこのタイプなら失血死するところを助けられても……ああ、退治って跡形も無くすことってこいつも思ってるなら感謝するか。
そうなると……残り二人を殺すのは、巫女を呼ぶためとかじゃなく、やっぱ仕事なのか。よく考えたら聡明を殺すことなくないって思ったけど、流石にあれ残してるとゆかり的に変な情報行きそうだから。一人殺してパワーをためて、暗闇出して聡明を屠る。頭の回る狂人とかいう。
頭の回る聖妖怪で仕事に忠実だが実は死にたいと思ってる。なんだこいつ……しかも実は死にたくなってるのも外側で、いざ自分の望んでない死に方がやってくると生きたいと思って自分を封印するエゴイスト。ねえ紫さん! 本当にこいつしかいないのかい! 今からでも藍出していいんじゃないかい! つけこむ隙があるように見せるにはいいんだろうか……頭が回ると仕事に忠実しか見てないんじゃないか疑惑。
は、華々しく巫女に散らされたいみたいなこう……これならエゴイストにはならない。けどそれなら退治したがりの美しいを連れ歩かないって。……巫女に仕立て上げようとした? いやあ無理じゃねえかな……。
- 紫の頼みで見といてくれと。そしたら自分で自分封印するレベルまで行った上にもう抗議できない。紫の責任問題発生。でもこのあとも良かれと思って情報部員送ったら紅魔館壊滅するんだよね……
待って、ルーミア倒せる相手を送り返したらどうなるかくらい予想つくぞ。良かれでやることじゃないと思うが、でもこっちで諜報部員を拘束するほうがありえないし。丁重に諜報を送り返したら爆発したでござる。
本来は三人ほどやって恐怖刻んだあと帰すつもりだったが、残り四人は内ゲバと首吊りで全損。仕方なく一人残った美しいを返す。……巫女パワー入ったままだけどいいの紫。いいんだもう定着してて剥がしきれないし。新しく作ったほうが早いし。ここまで妖力育ったら剥がしたら剥がしたでエグい妖怪になりそう。外に出して妖怪退治してもらえばにぎわうし、幻想郷。妖怪の衰退を加速。あの殺しきってるんでそいつ自身は来ないんですけど。見せしめにしかならないんですけど。良いのよ! もう良いの! 剥がしたところで私あんなの制御しきれないわよ! そんなのをルーミアに任せたんですか! こんな速度で成長するなんてありえないでしょうが! 幻想郷は何もかも受け入れますわ、けれど、それで幻想郷でなくなるなら、私はそれを否定します!
今からでも遅くないから隠岐奈……あいつ神だからちょっと……あとここに使うユニットにしては重すぎる。二童子は? まあ、大した仕事じゃなかったはずだしたまたま都合つかなかったのかもだ。隠岐奈はなんか察しててもおかしかない……いやあ正直村だし隠してはないな……。
後を鑑みると翁なら制御出来たぞ案件だった。外に出してから全力で制御法練ってたのかもしれない、
ルーミアはここで使うユニットなのか? ここで使うユニットなんやろなあ。出し渋るほどなら封印されたときに解くし。いくらなんでも霊力に精通もしてない粗末な封印をゆかりが解かないわけ無いだろう。……ないだろう? なんでそういや解いてないんだ? 霊力と妖力の対関係からもう手遅れなこと理解して……封印ごときでそんなんなるならもう世の中爆弾だらけだ。出処不明の博麗パワーと違って札一枚だし。これは自業自得だって思ってるなら追加の仕事なんて頼まない。あと追加人員用意する。やっぱ妖怪一団システムは必要だった……? 紫さん、あまりの恐怖に感情を閉ざしたんだみたいな扱いしてないかルーミアのこと。
頭の回る聖妖怪で仕事に忠実でどうせ死ぬなら華々しく死にたい。
文献を無視する。体験を体験でしか修正できない。
「……」
妖怪はボクを見て口を開いたが、そこから言葉は出てこない。代わりにがぶがぶと泡立った血が流れてくるだけだった。よく見れば、彼女の着物は所々が白かった。元々は白だった着物を、血が赤色に染めていたようだっだ。その血は喉からだけでなく、彼女の体中からも湧き出していた。彼女の肢体は紫に染まった場所もあれば、針に埋め尽くされ血が細く筋を描いている場所もある。
ま黒いなにか
ナイフ取り出し、ただ見る妖怪、自分の服切り
「……!」
傷手当、去る
「待て……」
致命傷のはずなのに
「肺を……優先して、治した。これくらい、造作もないのだ」
「それより、なんで治療した」
人が倒れてたら治す
「……私は妖怪だぞ。巫女から聞いてないのか」
でも治す
「気狂いだったのか。本当、運が無いな……でも、助かった。ありがとう」
立ち上がる、治るの早いね
「正直、困ってたのは針だけだ。まともに再生できなくなるから。安心しろ、しばらくは取って食ったりしないよ」
残念だ、反撃しようと思ったのに
「威勢がいいな? まあいいけど」
「そうだな。まず、それで帰られて私の評判が落ちるのは癪だ。ちょっと待ってて、別荘から服取ってくる」
行き戻り
「……お前、今どこに住んでるっけ」
「……今はこれで」
「光を通さない、音も通さない、断熱性もばっちりの特製だ。ただし今の季節は蒸れる。あと可愛くない」
感謝
「気にするな、これは最低限だ。……だから礼にならないのだよなあ」
「お前、何かして欲しいことはあるか?」
ついてく
「えっ。私の種族は言ったよな?」
頷き
「別に言ってるだけじゃないんだぞ。人を食ったから巫女に退治されたんだし。何より……あー」
「用事だ、すぐ終わる。覗くなよ。というか、動くなよ」
ど
「紫! おい紫ったら!」
く
「ちょっとした質問だぞ。それぐらい聞けよ」
は
「切ろうとするな! ならせめて式神の連絡先よこせ!」
く
「よくやった? よく分からないけどいいんだな? よし」
「なんだそれ。適当にあしらってないか? ……はいはい。分かったよ」
「ついてきていい。けど条件がある。よく聞くんだぞ」
「いいか。私は妖怪だ。それで、さっき食べたのはお前の仲間だ」
「これからもう一人、二人ほどお前の仲間を殺すつもりでいる。これは私の一存でどうこうなるが、するつもりは一切無い。それでもいいなら、しばらく付いてきていいぞ」
「本当に即答だな。……ちゃんと話は聞いてるんだよな?」
さっきの話を再生、やめろ
「わかった、もういい。契約成立だ。それでお前、名前は?」
「蓮、か。私はルーミアだ。しばらくよろしくな、蓮」
「いいぞ。たださっき言ったように、私は妖怪だ。今日もこれから人を食べに行く。そのつもりでいろよ」
おけ
「……ちゃんと話は聞いてるんだよな?」
さっきの話を再生、やめろ
私は妖怪だぞ」
そうだね
「なんで私が巫女にやられてたかわかるか?」
なんで?
「人を食べたのがバレたからだ。人を害した妖怪は、巫女が裁く。いつもはバレないように気を遣ってるんだけどな。今日は運が悪かった」
ついてく、
「……あー、少しの間動くなよ」
ど
「紫! おい紫ったら!」
く
「ちょっとした質問だぞ。それぐらい聞けよ」
は
「切ろうとするな! ならせめて式神の連絡先よこせ!」
く
「よくやった? よく分からんがいいんだな? よし」
「いいぞ。たださっき言ったように、私は妖怪だ。今日もこれから人を食べに行く。そのつもりでいろよ」
おけ
「……ちゃんと話は聞いてるんだよな?」
さっきの話を再生、やめろ
」
「だからまあ、そうだな……それで帰られて、私の評判が落ちるのは癪だ。ちょっと待ってて、服取ってくるから」
「私の別荘の一つさ。雨風も凌げるしクローゼットも一杯だ。きっとお前に合った服もある」
指さし、そっちはボクらの塒だ
「…………さっき食おうと思ってないって言ったばかりだ。そもそも、それくらいで怒るほど私の器は小さくないのだ」
「むう。取り敢えず、今はこれで我慢しろ」
闇の衣
「光を通さない、音も通さない、断熱性もばっちりの特製だ。ただし蒸れる」
「
スタートから一週間程度、ターゲットの寝泊まりしてる場所とか顔とか知ってるべきだろ
他のは遠いし、お前を連れまわすわけにはいかないし。お前はあまり長く一つ所に留まってくれるように見えないし」
美食家はどういう立ち位置だ。
やめ……やめろぉ! フランドール!
私の! 計画が! 溶けて、崩れて消えていくぅ!
だから隠岐奈か……
ああいう裏方はあの方に向いているというのもありますが、
一番の理由は、紫様がフランドールに会いたくなかったからです
あなた達もね、味わってみればわかるわ。
敵方から送られた当て馬軍。敵方も雑魚だと思ってる。
そんなぽっと出のうちの一人が、計画を乱雑に刳り潰していく感覚を!
二日目
早起きが妖怪と巫女目撃
弾幕の雨が降り出す
美しいが見惚れる
巫女=ピエロに力を貰う
生来の妖力を消しまくり体調不良、無視して進む嘘つき
払い棒も持ってけよ
ピエロ事切れる
妖怪側に近づきごっこ遊びを提案、退治後で死にかけの妖怪に話を聞く
まず手当
美食家、ここで食うのは美しくない
美しいとは何か? 正直村にも聞いて返って来なかったので、次はここに聞く