あるいは、■■■はそうであれと。
山間を吹き抜け、木々からの蒸散を吸って熱を失う。やがて辿り着くその風が更紗とほほをなでてiいく。平和で穏やかな山道だった。その舗装状況を覗くならば。
「……。下を、噛みそうだわ」
木を切り倒し、目印をつけただけの土の道。そんなものはタイヤが通ることを考慮しているはずもなく。時折体が浮き上がる、あるいは坐骨と荷台の金具が激突する。文明の利器の敗北が、そこにあった。
「こんな。道を進むだけの、利点があ、るのよね」
「うるせえな。荷物が喋るな」
「あ、ら。あなたの荷物も、持ってるのは私、なのだけれど」
「捨てたらお前も捨ててやる。その上で私の荷物だけ拾ってお前は轢く」
「嫌われた、ものね」
重量軽減の鞄をぐっと抱き締め、次の段差に備える。木の根が土をめくり上げるほどに大きく露出している。そこをぐっと乗り越えれば、自転車は宙を舞い、やがて地面を叩き付け進む。まるで耕しているようだ。そうだ、車輪形のクワなど面白いものではないか。そんな想像に頭を悩ませていると、ふと体がシエラの背中に倒れ込んだ。
「急停止は迷惑になるわ。